第68話 今を切り取って ページ18
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雲ひとつない、くっきりとした青空。生ぬるい風すら心地良く感じてしまうほどの開放感に、思わず伸びをした。
帰りたくないなあ。
ふとこぼすと、隣の君が頷いて微笑んだ。
最終日。
非現実的なこの空間にいられるのも、あと数時間。
みんなから謎に気を遣われて、私たちはまた二人きりになった。
別に嫌じゃないし、むしろ感謝してるくらいだけど、こういう気遣いとかよそよそしさって何か照れちゃう。
修也はというと……、全然そんなふうには思ってなさそうな感じ。
いつの間にかけたのか、イカしたサングラスをペカペカ光らせながら、波打ち際をうろうろしている。
似合うなぁ、サングラス。
変な柄のアロハシャツも、真っ青の短パンも、この人のためだけに存在してるんじゃないかってくらい、綺麗に着こなしてる。
雑誌じゃん。もうそれ、表紙飾れるよ。
スマホ片手にこっそり……のはずが、撮られると気づいた途端に、やたら自信満々にポーズを決めてくる修也でカメラロールは埋め尽くされた。
「次、Aな」
「やだよ」
と言いつつ、カメラを向けられるとそれなりにポーズとっちゃうのが人の定め、的な。
「A、もうちょっと左。あー、違う、もうちょい右。いや違うな、左か?」
「どっち?ここ?えっ、こっち?」
こんな感じで、写真に撮られ飽きた頃、ようやく訊きたかったことを口にした。
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作者名:pomme | 作成日時:2021年3月22日 10時