触れて確かめて 【豪炎寺修也】

第16話　思い込みも大切 ページ16

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「何笑ってるんですか」


「そんなに心配してくれてるの、なんかちょっと嬉しくて、つい……」


「反対の足首も捻ってあげましょうか？」


本気で捻ってきそうな雰囲気でそう言う豪炎寺くん。『うそうそ、冗談だから』というと、納得しない様子で私を睨んだ。





本当は冗談なんかじゃない。

心配してくれている、その事実が無性に嬉しかった。足の痛みなんかどうだっていいと思えるくらいに。

だって、好きだから。





どこか嬉しそうな顔で器用に湿布を貼る彼の表情と、さっき見た表情が重なる。

もしかして……と、淡い期待に胸が膨らむ。


今だけでいいから。勘違いしていたい。

私にとって都合の良い未来を想像して、ドキドキすることくらい良いでしょ？








「はい、できました」


「ありがとう」


『さすが、お上手』と褒めると、豪炎寺くんは慌ただしく片付けながら『さっさと行きますよ』って私を急かした。





部室のドアを開けた豪炎寺くんが『うわぁ』と、らしくない声を上げた。


「どうしたの」


その横からチラッと外を覗いて、驚いた。さっきよりずっと黒い雲が広がっている。

ほんと、うわぁだ。

土砂降りになる前に帰りたい。ものすごく。




「部活サボって帰ります？」


くいっと口角を上げて悪戯っぽい笑みを浮かべる豪炎寺くん。

そんな表情もするんだって、また勝手に嬉しくなってる。


「帰っちゃおうか」

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