第81話 小さな亀裂 ページ32
◇
着実に、二人の間を割いていく小さな亀裂。
それは同時に、好都合な隙間になる。
影山も大人気ないよなぁ。
たった一言で拗ねてちゃ、今じゃなくたって、いずれAちゃんに見限られるんじゃねぇの?
俺たちの試合が少し早く終わったから、ちょうど始まったらしい烏野の試合を見ることになった。
だから、こっそりAちゃんの様子を伺った。
他のやつは気づいてないかもしれないが、俺にはすぐにわかった。
ふたりの間を走る、緊張感。
無理して笑ってたろ?
誰にも何も悟られないように。
胸が痛かった。
それ見て、その場でキミを抱きしめたい衝動に駆られた。
無理しなくていい。
影山にこだわんなくても、俺がいる。
俺にしなよって。
「余計なお世話です」
そう言うAちゃんの瞳の奥は、悔しいけど、俺じゃなくて影山を追ってる。
何で懲りねぇの。
「黒尾さん」
Aちゃんが真っ直ぐに俺を見据えた。
「黒尾さんが言ってくれたこと、嬉しかった……けど、私……」
「待って」
キミが今何を言わんとしているか、さすがにわかる。
でも、待って。
華奢な肩に右手を乗せた。
「へっ……?」
不思議そうな顔をしたAちゃんに、柔らかいまなざしを向ける。
キミの唇の前に人差し指をそっと立てて、片目を瞑った。
「まだ、言わないでよ」
◆
さすがに大人気ない。
Aの様子がいつもと違うことがわかっているのに、変なプライドが邪魔して、引けなくなって。
だんだん遠ざかる距離にイラついた。
Aが俺に言わなかったのは、まぁムカつくけど、何か理由があるんだと思う。
だってAってそういうとこあるだろ?
一歩踏み出すのは難しく見えて、とても簡単だ。
変なプライドを捨てさえすれば。
「あの、清水先輩。……Aは…」
「トイレ行くって」
体育館を出てから思った。てか、どこのトイレだよ。
引き返して訊こうと思ったが、やめた。
遠くの方に、忌まわしいトサカベッドが見えたから。
何となく、コイツが行く先に、Aがいる気がした。
不本意。
少し早足でその背中を追う。
案の定、Aもいた。
超不本意。
建物の影に身を潜めて様子を伺う。
何か話すふたり。
ふと、その距離が縮まった。
ドクンと嫌に心臓が跳ねる。
赤いユニフォーム越しに、頬を染めた君が見えた気がした。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時