第62話 ストイック ページ13
．
「もう一本っ」
「はい。いくよ〜」
ネットの近くにペットボトルをいくつか並べて、そこにボールが着地するように、ボールのスピードと角度をコントロールする。
私だったら一瞬で心が折れてしまいそうな練習を、影山くんは何度も何度も、微調整を繰り返しながら続けていた。
忍耐力とかの次元じゃない。
どこまでも高みを目指す、ストイックさ。それを隣で見ているだけで、ヒリヒリするほどの緊張と熱を感じた。
かっこいい。
心からそう思った。
ドキドキするトキメキとは違う類の何かが、体の中を駆け巡る。
着地して一息つく度に、額の汗がきらりと光る。
それすら私の心を熱くした。
．
最終下校時刻、約３０分前。
片付けも二人でやらなくちゃいけないから、本日は早めの退散だ。
お互いに無言でテキパキと片付ける様子はとってもシュールで、意味もなく笑えてくる。
『何笑ってんだ』と、不思議そうな顔をした影山くんが、倉庫の鍵をガチャンと閉めた。
「そういえば……」
「ん？」
影山くんが立ち止まってくるりと振り返る。
そして流れるように、私の掌に鍵を乗っけた。
「私服、初めて見た」
「そうだっけ？」
『意外』と溢すと、影山くんは小さく笑った。
「どう、初めて見た私服。可愛いっしょ」
「まあ……」
「ぷっ、何それ、反応わっる。…ほら、もういいから帰ろ帰ろ」
そう言いながら、とーっても失礼な影山くんの手を引く。
私の質問には反応しないくせに、こういうときも、ちゃんと繋いだ手は握り返してくれるんだから、怒れない。
「A、電気消さねぇと」
「あっ、そうだった。ねぇ……手、絶対離さないでね。私あそこ苦手で…」
「ふっ、わかってる」
影山くんが、繋いだ手に力を込める。
ついでに腰に手を回し始めたけど、その手は払っといた。
さすがにやめて。誰もいないとは言え恥ずい。
ステージ裏の薄暗くてひんやりした空間。
薄気味悪いその場所が、大の苦手だった。いつもは絶対に近づかない。
苦手なのは、幼い頃のトラウマ的なあれでもあった。
だから、誰かが消しに行ってくれるのを待つ。
影山くんも、それを知ってるから、いつも一緒に並んで、黙って見てる。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜！！🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (
レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます！！！黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう！もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜！ (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう！好き！コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に！愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます！ (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます！！！嬉しすぎて、もう泣いちゃう！！素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pomme | 作成日時：2022年1月20日 23時
