それはまるで夢のようで.2 ページ24
ローテーブルに出される四つのティーカップ。
「護衛の皆さんも連日お疲れでしょうし、是非」
「いえ、有難いのですが、うちの護衛は大丈夫なので」
「ではお茶だけでも。酸味が強く、すっきりとした舌触りが特長なんです。お茶菓子は星を獲得した店からのマドレーヌでして。是非召し上がってください」
普段なら毒物を警戒して、相手から出された食べ物は口にしない。外交官が口にする時は護衛が最初に毒味をする。
だが、この時は油断していた。数日間に渡って殺意の無さを感じていたし、長々と続く会談に飽きていたところもあった。
「……では頂きます」
「本官もお言葉に甘えさせて頂きます」
「砂糖とミルクもあるので、是非、是非……」
ああ、確かに酸味がある。匂いも独特だ。立ちながらカップを傾けるAは、甘いものに少しだけ表情を柔らかくしている。
「……ここの茶葉は確かに酸味のありますね。クセがあって美味しい」
「お土産にお包みしましょう。是非、マドレーヌも……」
流石にマドレーヌは口にしなかったが、頬張るコネシマの顔には異常無し。なんてことの無い、普通のお茶会だった。
……なんかこのお茶、やけに酸っぱい。変に口に残る。俺は好みじゃないな。
話は穏やかに進み、さて不可侵条約について話す頃合いの時。
「……」
Aの唇が小さく震えている。体調不良か。いや、今朝の健康診断では何ともなかった。目はしっかりとコネシマの後頭部を見つめているが、時折唇を薄く開けて息を吐いていた。
コネシマの様子は依然普通。普通、そう、普通。少し空気が揺らいでいて、喉が締め付けられるような、そんな雰囲気で、
「……ゾム殿？」
やられた、と感じる頃には、自分の喉を掻きむしっていた。苦しい。息が吸えない、いや吐けないのか、分からないほどに苦しい。
「おいゾム！しっかりせえ！」
「どうされました？」
「ぁ……シ……マ……逃げ……」
「ええ、そうですね。おやすみになられた方がよろしいですね。ゆっくりしていってください。是非、是非……」
頬に絨毯の毛先が当たるのも気にならないほどに喉を掻きむしる。俺の気道を確保しようと顎を上げようとするコネシマの背後に、外交官が立っていて。
「ぐ、っ……」
「コネシ……マ……」
「部屋に連れて行きなさい。一般兵は拷問室に」
「かはっ、っあ、ぐ……」
ばたつく手足を拘束され、物のように運ばれているうちに、俺は意識を手放した。
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さとうきび(プロフ) - えるをん×@×IAさん» コメントありがとうございます！これからも精進してまいります。応援、よろしくお願いします！ (2018年4月5日 22時) (
レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
えるをん×@×IA(プロフ) - とても素敵な作品だなと思いながら読ませていただいている者です。これからも頑張って下さい(´q`) (2018年4月5日 0時) (レス) id: b8e4739678 (このIDを非表示/違反報告)
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