それはまるで夢のようで.1 ページ23
走っていた。
口の中がカラカラに乾いて、足が何度ももつれそうになっても、走り続けていた。
「輸血パック！早く！」
「脈拍数低下、出血止まりません！」
「ガーゼ持ってこい！輸血パックはまだか！？」
「駄目です！未だ脈拍数低下し続けてます！」
「……あっ、幹部殿！今は治療中で」
「A！」
目の前で血に浸る彼女は、目を閉じたままだった。
「A！Aッ！」
「おやめください、今はまだ治療中です！」
「なあA！」
「……おいシャオロン！」
頬に走る痛み。気が付いた時には地面に身体が叩きつけられていた。
「しっかりせえ、このクソ雑魚シャオロン！」
「ゾム……」
「すまんな、邪魔して。この阿呆はもらってくから」
「は、はい」
「輸血パック追加！急いで！」
消毒の臭いが鼻に染みた。ツンとした臭いが、乾いた喉に染みた。
「軽傷者は二等兵一名、重体一名、負傷者は以上や」
「ご苦労、ゾム。外交の方は？」
「不可侵を結んだままやけど、もう無いも等しいな。あちらさんが先に手出してきたし、開戦待った無しやろ」
「Aの状態は？」
「……意識はまだ戻ってない」
「……そうか……」
「……拷問を受けたんや。無理もない」
生温かい液体の感触が未だ背中に残っている。
Aを発見した時にはもう虫の息だった。血溜まりの中に横たえていて、意識は朦朧としていた。
「同伴者はゾムとコネシマ、二等兵三名。ツェスヴェリー帝国に外交へ向かったのが四日前」
「……一日目は上手くいってた。二日目も。不可侵条約の延長も取り付けられる雰囲気だったんや」
「……三日目や。拘束されたんは」
俺はあの日の事をグルッペンに話し始めた。
「……油田地帯にはお互い触れないということでよろしいですかね？」
「勿論です。こちらとしても無駄な血は流したくないので」
コネシマは渡される書類に目を通しながら相手の外交官と話を進めていく。俺とA、一般兵一人は護衛として後ろに立ち続けている。
「ツェスヴェリーとは今後とも良い関係を築けていけそうで安心しました」
「ええ、こちらとしても嬉しい限りですよ」
不可侵結んでる時点で開戦はいつか来るのに、良い関係もクソも無いわな。
そんな事を考えながら欠伸を噛み殺す。隣のAを見ると、初日よりは力が抜けているのか少しだけ眠そうにしている。
「ああ、ここで少し休憩しませんか？本国で有名なお茶菓子がありましてね」
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さとうきび(プロフ) - えるをん×@×IAさん» コメントありがとうございます！これからも精進してまいります。応援、よろしくお願いします！ (2018年4月5日 22時) (
レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
えるをん×@×IA(プロフ) - とても素敵な作品だなと思いながら読ませていただいている者です。これからも頑張って下さい(´q`) (2018年4月5日 0時) (レス) id: b8e4739678 (このIDを非表示/違反報告)
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