それはまるで夢のようで.3 ページ25
「気付いたらシッマもろとも手足縛られて牢屋の中に転がってて、あいつら俺の靴底にあるナイフに気付かんかったみたいで。そのナイフで縄切って見張りの兵士の鍵奪った」
「そんでシッマ連れて、兵士は抵抗したみたいで額から血出てたけど、みんな意識は大体しっかりしてた。俺はまだふわふわしとったけど」
「拷問室探して行ったら、あいつ、ツェスヴェリーの外交官と倒れているAがおった。あいつ殺して、A背負って、帰ってきた」
「……なるほどな」
グルッペンは一言呟いた後、手元にあった紙束を手繰り寄せ始める。伏せられたその瞳はアイスブルーのように冷えていた。
「……報告ありがとう。ゾムも毒を盛られただろ。しんぺい神の所で健康チェック受けて休め。コネシマにも伝えろ。しばらく出撃禁止な」
「いつもなら戦場に行きたいってなるんだけどな。……まだ身体がしんどい。お言葉に甘えて休ませてもらうわ」
俺はそう言って、総統室を後にした。
廊下ですれ違う兵士。中には体調を心配してくれるやつもいて、話は既に広がってるのかと思いながら医務室へ歩く。
「……お、大先生や」
途中の作戦会議室で大先生の姿を見かける。いつもなら奇襲をしかけるが、今はそんな気力も無いのでこっそり背後から近づくだけにする。
あと四メートル、三メートル、二メート……
「……何を言ってるのか分かりませんねえ？」
足を止めた。
「そちらさんへ派遣した外交官と護衛二名がどうも『手厚い』歓迎を受けたようで、ええ、それはもうたっぷり堪能させて頂きましたよ？……ああ、もう一人、護衛がお世話になったようで、はい……そちらの国に貿易関係の書類、荷物、それから、不可侵条約の更新も置いてきてしまったようで。……はい。……では、明日の正午ごろに『取りに行きます』ので……あ、今度は歓迎の方は結構です。さっさと行って帰りますんで。……え？すみませんね。電波が悪いようで何も聞こえなくて、
……では、待っていてくださいね？さよなら」
部屋は紫煙が立ちこめていて、大先生は山盛りになった灰殻入れに煙草を押し付けた。最近薄くなってきた隈も濃く、ワイシャツも皺だらけだった。
「……」
背後に伸ばした手を後ろに回し、そっと部屋を離れた。
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さとうきび(プロフ) - えるをん×@×IAさん» コメントありがとうございます！これからも精進してまいります。応援、よろしくお願いします！ (2018年4月5日 22時) (
レス) id: d7a52c799a (このIDを非表示/違反報告)
えるをん×@×IA(プロフ) - とても素敵な作品だなと思いながら読ませていただいている者です。これからも頑張って下さい(´q`) (2018年4月5日 0時) (レス) id: b8e4739678 (このIDを非表示/違反報告)
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