終焉のラプソディ【及川徹】 (ページ7)

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Rhapsodia：07 ページ7

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俺は君がきらいだ。俺の気持ちを露知らず、何も言わずに旅立っていった君がきらいだ。

でも、すきだった。どうしようもなくすきだった。

君がこの世界からいなくなった今、ぽっかりと胸に開いたこの虚無感はなんだろう。

『オイカワは、ピエロは好き？』

君の片言じみた、懐かしい声が脳内で反響する。

「…ピエロは、きらいだ。」

3年前、彼女に向けて放った言葉を、口の中で転がしてみる。

あのとき、もし彼女に「すき」だと言っていたら俺は、彼女の最期を見届けるピエロになれただろうか。

まあ、そんな“IF”の話をしたところで、何があるわけでもないのだけれど。

『忘れられたら、楽なのにね。』

彼女に別れを告げられるより少し前、あの時の彼女の言葉が自分の病気に対してだったとしたら。

「…笑える。」

ピエロになり損ねた男は自分の過ちを自嘲的に嗤いながら、ゴールの見えない綱渡りをしていく。でも、滑稽な道化師(及川徹)には、「落下」という選択肢しかないのだ。

それは彼自身も分かっていた。

不意に、彼女の笑顔が脳裏に蘇る。

そういえば、彼女はピエロに会えたのだろうかと、どこか他人事のようにそう思った。