【ワールドトリガー】近すぎる好き Ⅲ (ページ5)

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102cm ページ5

「ここ間違ってる」

士郎くんの指がトントンとノートを叩く。なんで本を読んでるのにわたしの課題の間違いがわかるんだろう。目がもう一つあるのかな。

「ほらあと10分したら基地行くんだし、さっさと終わらせなよ」

今日任務でしょ、と言われて頷く。

今は部屋で士郎くんに冬の課題を教えて貰っている。あと10分したら家を出て基地に向かう時間だ。

「それも違う。ねぇほんとにこの物語理解してるわけ？」

古文の課題に苦戦するわたしに士郎くんが呆れた目を向けてくる。

「理解と言われても……」

「まったく、世話が焼ける。残りは帰ってやろ。ほら、基地行くよ」

「え？でもまだ時間に余裕あるよ？」

「なに？文句ある？」

「……支度します」

士郎くんに低い声で聞かれて大人しく課題のノートを閉じる。

「……詰め込んでも覚えられないでしょ。ゆっくり歩きながら行けばいいじゃん」

その言葉に顔を上げるが、士郎くんと目が合わない。照れてる。間違いなく照れてる。

「ふふふ」

「何笑ってんの。置いてくよ」

士郎くんがマフラーを巻いて口元を隠しながら荷物を持つ。慌ててコートとマフラーをクローゼットから出して身につけ、鞄を持った。

「お待たせしました！」

「行くよ」

士郎くんが先にさっさと歩き出して、少し小走りに士郎くんの背中を追いかけた。追いつくと自然と士郎くんの足がゆっくりになって、歩きやすくなっていく。多分、わたしの歩く速度に合わせてくれている。

「ありがとう」

お礼を言うが、返事はなかった。でもまぁ、耳のいい士郎くんに、聞こえてないわけは無いし、大丈夫かな。