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19話 ページ19

蒼龍の声が耳に入った影田は声のした方へ振り返り目を見開いた。

 雷門中にあのような選手はいただろうか、そりにしても綺麗な顔をしている、そんなことを一瞬考えた。

 列の一番後ろ吹雪の隣に座っていた蒼龍は無表情だった。整った顔だちの人間がする無表情は怖い。それを本人が理解してやっているのかどうなのか知るよしもない。あまりに静かで事態も事態だったために、雷門イレブンですら蒼龍の存在を忘れかけていた。

 水色のこちらを獲物を狙う猛禽類(もうきんるい)の如く、真っ直ぐに静かにこちらを見据える両目に、影田は背中につーっと汗が伝うのが分かった。なんの汗なのかは分からない。

『私は実際に学校が破壊された様子を見たわけではないが、ひどいものだった。君たちは見たか?あの惨状をただの瓦礫の集まりだ。あれは学校なんかじゃない。仮に話を聞き入れてもらえなかったら、ここもそうなるんだぞ。それを理解しているのか』

 いっそ冷たさを感じる無表情で一気に捲し立てた。場所のせいかどこか武士のようだなと鬼道は場違いな考えをしたがすぐに思考を戻した。

 表情を変えずじっと影田を見つめままの蒼龍とフリーズしたかのように動かない影田。

『もう一度聞こう』と蒼龍が口を開いた。無表情で、冷たく、悪人を追い詰める時代劇の武士のような雰囲気だった。

『君たちはエイリア学園と本当に戦うつもりはないのか』

 誰もなにも喋らなかった。雰囲気に気圧されて喋ることができなかった。

「…………私たちの意見は変わりません。失礼します」

  もう一度合掌と礼をして道場から出た。

 蒼龍の表情が僅かに曇った

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作者名:南極 | 作成日時:2019年11月29日 20時

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