【selly】道を間違えずに進めたら良かったのに。[完結]

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｢“いやだから、なんかもう置いてけない状況なんだって。オレ日本語分かんなくて説明出来ないから、mondo来てよ”｣





全く何言われてるか分からないけど、何とかしようとしてくれてることだけは分かった

電話向こうで交渉しているんだろうか



私は迷惑以外のなにものでもないので、人間の良心ばかりが頼りだ




｢あー、おい。｣



｢はい｣



｢なんか、おいでって。あいつ日本語……上手いけど、すぅー、めんど…くさい？から、来ると助けてくれる｣




途切れ途切れの日本語でもなんとなくの意味を汲み取って私は考えた


どうやら日本語のうまい彼のチームメイトの所へ行けばどうにかして貰えるという話だろう


めんどくさいという不安な日本語を使っていたけど、彼が使い方を間違ったのだろうという判断にさせてもらおう
怖いから。


私は時間ならあるのであとは日本魂。本音と建前の建前を抜くだけである




｢よろしくお願いします｣





私は今日何度目かも分からないお辞儀を彼に捧げた

あぁ、本当によろしくお願いします。






｢着いてきて｣



｢はい｣




とてもとても親切な人に出会えた
そのことに比べれば私の指の1本や2本、本当に可愛い犠牲である

私は彼の共に小走りで駆け寄り、少し後ろを着いて歩いた




歩いている間、彼は特に話すこともなく黙々と目的地に向かって足を進めている


私も初めての韓国に見慣れないものばかりでキョロキョロとしながらも彼を見失わないようにしっかりと着いていった





｢あー、名前なに｣



振り返りざまに聞かれた質問に名乗っていなかったことを思い出し、私は自己紹介をした




｢Aです。姉がこっちに住んでいて、遊びに来たんですけど、その姉と連絡つかなくて迷子になってるところです｣



｢あねがなに？｣



｢シスターです。大きい方の
ビック シスター｣




｢あぁー、はいはい。｣




それを境にまた彼は話さなくなってしまったので、私も黙った
彼の名前も聞きたいところだけど、韓国の名前を上手く聞き取れないだろうから

それに個人情報を相手が漏らす必要は無いし




そう自分に言い聞かせて、話を踏み出せない理由にした

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