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「そこの女人」
「はい、なんでしょう」
「我らの主はこの国を収める主君である」
お金持ちであると思っていたけど、まさかこの国の最上位の名前が出てくるとは思わなくてリアクションさえ取れない
いや、そもそも最下位に位置する私たち庶民にとって、貴族様だろうが王様だろうが同じことなのだが……
お母さんも絶句したように息を飲んでいるようだ
「この度、この国のためにこの家の娘である酒場娘のAを貰い受ける」
「そ、そんな…っ!ど、どうかご慈悲を……うちの子は何も粗相はしておりません」
「いや、咎人ではなく子として迎え入れるのだ
喜べ女。そなたの娘が貴族いや……王族になるというのだぞ、誇り高き名誉ではないか」
ちょっと待って……
それってつまり───
私は顔も知らない王様の子供にされるってこと?
なんで?こんな庶民の、この人たちからしたらいないに等しいような私を
どうしてそんなものにしなくてはならないの?
確かに名誉なことなのかもしれない。
かもしれないが、手放しに喜べるような話では全くない
というかその役は私には無理だ。絶対に無理だ。
お金持ちになりたいな。なんて考えは叶わないから楽しいのであって、実際に起こるのは話が違う
貴族の一員なんてなれるはずがない
そもそも住む世界が違う。
無理に決まっている
「Aは大事な娘で───」
「これは決定事項である。そなたらには王から謝礼金が出るだろう」
目の前で繰り広げられている会話がどうも自分の話のように思えない
全くの他人の話のようだ
だってあまりにも現実味のない夢物語だ、こんなの
「娘、写真の1枚は持たせてやろう。今すぐにここを出る
親に最後の別れをしてやれ」
「お、お待ちくださいませ……なぜ。なぜ私のような一介の町娘が王の目に止まったのでしょう
とても似合う地位ではございません。どうかお考え直しを」
ガタガタと震える膝を床に付けて、深く深く頭を下げる
そうだ、私は床に頭を近付けることだってなんとも思わない。そんな人間なのだ
落ちたものを拾いもしない貴族とは全く違う
食事だって、パンと味のしないスープばかり
まともなカトラリーなんて使ったことも見たことも無い
そんな私がいきなり王様の子供になれなんて馬鹿げた話、おかしいではないか
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パール(プロフ) - イムム・ルリクリルさん» あ、ありがとうございます。長いですがお付き合いいただけると私が嬉しいです笑。ルビは完全にやらかしです。教えていただきありがとうございます(泣) (2021年4月2日 16時) (レス) id: ced046ff92 (このIDを非表示/違反報告)
イムム・ルリクリル - おすすめに出てきたので、読んでみたら、神作品でした!(真顔)まだ、読み終わってないですが、すごく面白いです!あ、えっとそれでページ15の上から21行目(?)のRubyって、ちゃんとrubyなっていないのは僕のところだけでしょうか…?間違いだったらすみません (2021年3月31日 18時) (レス) id: 22463df6e5 (このIDを非表示/違反報告)
パール(プロフ) - 乃々夏さん» はじめまして、おはようございます。しょ、書籍化!?そんなですか!?ありがとうございます笑 歌い手様たちの特徴を捕えるのに必死です笑 (2021年1月8日 9時) (レス) id: ced046ff92 (このIDを非表示/違反報告)
乃々夏(プロフ) - はじめまして!!!!なんか好きです←は? 書籍化してほしいレベルです!!!!はぁ…志麻さんのちゃんづけヤバい////(志麻リス) (2021年1月7日 22時) (レス) id: e426f8e368 (このIDを非表示/違反報告)
パール(プロフ) - 鼎さん» 自分の性癖をぶち込んでいこうと思います笑 (2020年12月24日 7時) (レス) id: ced046ff92 (このIDを非表示/違反報告)
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