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一人が舞台袖から出てくる。
紅月の親玉である蓮巳敬人だ。
「蓮見先輩、格好良い...」と隣が呟いていたから、
間違いなくアイドル科の副会長なのだ。

それにしても登壇してくるのが遅かった。
衣装を着るのに時間が掛かっていたのだろうか。
着付けるのに慣れていなければ、
多少時間の掛かるようにも見える紅月の衣装。
普段はユニットの誰かに着付けを
手伝って貰っているのでは無いか。
今回は何らかの想定外が起こり、
一人で着付けなければならなくなった。
それならば、遅くに登壇してきたのも肯ける。

先程までUNDEADと紅月がごちゃ混ぜになって
舞台(ステージ)上に立っていた。
それが副会長が来てからは布陣が変わった。
舞台が二つに分かれたのだ。
東西にユニットが陣取る。
陣取り合戦でも始めるのか。


「紅月とUNDEADの共演とか最高すぎでしょ...」

「デッドマンズの時、めちゃくちゃ好きだった〜」


周りからはこんな声が聞こえる。
成程。
つまりこれは、対バンなのである。
対バンおよび“対バン形式”。
それはバンドやアイドルなどの歌手が
ライブを行う際に単独ではなく、
複数のグループと共演するコト。
これが行われる際には何かしら理由がある。

例えば、興行自体を成功させる。
単独では多くの集客を見込めない場合、
複数で集まることによって
集客を増やし興行の成功を目指す。
失敗した時でも損失を分散させることもでき、
リスクを小さくすることができる。
また共演する事で会場等の規模を大きくできたり、
新たなファンの獲得などの利益もあるコトから、
この形式を取る場合もあるらしい。

だが、共演を目的とはしていないようだ。
この会場の盛り上がりから言って、
紅月もUNDEADも単独でやっていける実力がある。
会場の規模はもともと決まっていたのだから、
はっきり言って関係ない。
このライブは複数のユニットが出場するものなのだ。
新しいファンの獲得にしても、
二つのユニットが一緒にライブを行う必要はない。



つまり、この対バンの理由は労力の削減。

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作者名:咲片 朔夜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年9月16日 16時

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