うちのマネは女装男子でした５【男主】

165話 ページ21

縁下side





知らなかった



気づかなかった



気づいてやれなかった



いつも隣にいるのに





部活の度に苦しんでいることを知らなかった






縁下 (マネージャーをやる理由だって…！)






お姉さんの願いを叶えたのに今でもやるのはあいつが苦しんでいた時だったんだ



Aのこと、分かっていたつもりで何一つ分かってやれてなかったんだ



たまに感じる距離感はきっとこれだったんだ



俺には言えなかったんだ






縁下 (俺が……天才だって言ったから…っ…！)






当然、Aの努力の賜物だとは思ってる



何度も俺はAのプレーを褒めた



過去の試合の話だってした






________________“俺は天才じゃない”






天才だ、と周りに勝手に祭り上げられて、



天才だから、と巨大で無責任なプレッシャーをかけられて、



いつの間にかあいつは“天才でなければならない”存在になっていた



天才であり続けなければならないという強迫観念がAの身と心を滅ぼした






澤村「縁下」


縁下「！…だ、大地さん……」






Aと別れ、ふらふらと校舎内を歩いていると大地さんにまた会った。


その目は暗く、表情は重い。






澤村「……まだ、心の整理が出来てない。…正直に言って、信じられない」


縁下「……俺も、です」






重苦しい空気が流れ始めようとしたそのとき、






谷地「あれっ？体育館に行かないんですか？あと5分で始まりますよ！」






ニコッと笑う谷地さん


………ああ、今はこれ以上考えるべきじゃない


きちんと、Aの口からもう一度聞きたい






澤村「……行こうか」


縁下「………そう、ですね」






ゆっくりと体育館に向かって歩みを進め始めた。


足取りは重く、瞼にはAの悲しそうな淡い微笑みが浮かんでいた。

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