第121話 懺悔 ページ44
マリアは、地下牢の荒廃した空気とルビソンの姿に少し足を震わせながらも、声を発した。
「ルビソンさん、あなたの家はビアンカの技術を継承した、職人一家だったそうですね」
皮肉じみた口調でルビソンが言う。
「…そこまで調べ上げたのか。俺の素性を知ったところで、お前には何のメリットもないだろうに」
「あります。私は、アステラス王国独自の織物であるビアンカで、国を復興させたいんです」
迷いのない真っ直ぐな瞳でそう言ったマリアを見て、男は渇いた声で笑った。
「そんなもの、もう何の価値もない。…俺だって昔は同じように思っていたさ」
どこか寂しそうな表情を浮かべて、自らの過去を静かに語り始めるルビソン。
「一族が職人の称号と共に代々受け継いできた技術を、親父やお袋と一緒に守っていきたかった。毎日機織り機の前に座って、懸命に織ったよ。あの頃の俺は純粋に、ビアンカの良さを皆に伝えたかった。
でも、古いものはいずれ忘れられてしまうんだ。いらなければ捨てられる。それがこの世のルールさ。
だから俺は何としてでも生き残ると誓って、家を出たんだ。下級貴族の下働きから始めて奴らの機嫌を取り、更に偉い人間の下について上りつめていった。
ペコペコ頭を下げながら、無様に生きた。屈辱的なこともやった。自分が愚かだとはわかっていたさ。全ては復讐のため。欲にまみれた貴族や重役ども、内政に干渉しアステラス王国を破滅に追い込んだ煌帝国……
奪われたなら、せめてそいつらを踏み台にして俺が這い上がってやろうと思ったんだ。
だが、今になって気づいた。俺はいつの間にか、上に立って民を苦しめるあいつらと同じになろうとしていた。
………こんなこと、俺自身が一番望んでいなかったはずなのにな」
マリアはその話を聞きながら、ふと脳裏に、選挙のあの日、本性を現して自分に辞退を迫ったルビソンの顔が浮かんだ。
(あのときは最低な人って思ったけど、この人にも辛いことがあったんだ。マーサさんみたいに……
私、今まで自分のことで精一杯だったけど、私だけが辛いわけじゃないんだよね。みんな、色々なものを抱えて生きてる。
もしかしたら、煌帝国の人たちにも……何か事情があるのかな)
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ちぇりい(プロフ) - のどかさん» コメントありがとうございます! 続きを更新できるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2015年11月5日 6時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
のどか(プロフ) - お久しぶりです!この小説も第三弾ですね、前回の展開がやばすぎて(フィアちゃんかっこよすぎですよ。)これからも頑張ってください!続きが気になって仕方ないですー! (2015年11月3日 22時) (レス) id: c4d22bd61b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぇりい | 作成日時:2015年11月1日 17時