第85話 Soothing ページ5
夜が明け、朝がやってきた。
「ふあ〜」
マリアが目を覚まし、欠伸をすると、隣にフィアの姿はなく、シーツに抜け殻の様な人の形が付いていた。寝台の横にある小さな机に、ちょこんとメモが置いてある。その紙には、走り書きの様な字でこう書かれていた。
『あたしは弓術の練習に行ってくるわ。昨日のこと、メイたちには言わないでよ! 絶対だからね!?』
マリアはそれを見て、くすりと笑う。
「わかってるよ」
寝巻きを脱ぎ、お気に入りのリボンのついた真っ白なブラウスと、チョコレート色のスカートに着替える。
窓の外を見ると、今日はとても暖かそうだったので、少女は散歩に出掛けることにした。
◇◇◇
ぼーっとしながら、たくさんの白百合が咲いた禁城の裏庭を歩く。
(私、こんなにのんびりしてて良いのかな…)
何か自分にできることはないだろうか、と考えているが、思い付かない。煌帝国との会議は中断されているし、フィアの弓術勝負はこれ以上自分にどうこうできる問題ではない。
今のマリアには、女王として国の行く末を見届ける事しか出来ないのだ。
「マリア!」
ふと、とてもあたたかくて響きのある声が聞こえた。マリアは途端に顔をほころばせ、声の主の方を見る。
「アリババくん! また剣術の練習!?」
短剣を握ったその少年は、人懐っこい笑みを浮かべた。
「おう! 少しでも強くなりてーんだ!」
「ほんと、アリババくんは頑張り屋さんだねぇ」
少女が感心したように頷くと、アリババは、目を伏せ、表情を曇らせた。
「あのさ、マリア…ごめんな。俺……役に立てなくて。ルカの件、紅炎たちに言ったんだけど…」
「いいの。ルカを庇ってくれたんでしょ?」
「それだけじゃねーんだ。俺、マリアがいない間にルカと話したんだよ。あの時、あいつの様子がおかしかった。俺が気づいて止めるべきだったんだ」
マリアはその話を聞いて、アリババがレイラと同じことを言っている、と気がついた。
レイラもルカを止められなかった自分を責めていた。その二人の様子が重なり、マリアにはとても痛ましく思えた。
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ちぇりい(プロフ) - のどかさん» コメントありがとうございます! 続きを更新できるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2015年11月5日 6時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
のどか(プロフ) - お久しぶりです!この小説も第三弾ですね、前回の展開がやばすぎて(フィアちゃんかっこよすぎですよ。)これからも頑張ってください!続きが気になって仕方ないですー! (2015年11月3日 22時) (レス) id: c4d22bd61b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぇりい | 作成日時:2015年11月1日 17時