第113話 閃き ページ36
「マリア、それみてもいい?」
メイがおずおずと問いかけると、マリアはこくんと頷いて膝掛けを渡した。
「お母さんがもってたのとおんなじだ…」
「でも、マーサさんが作ったのなら、どうしてメイのお母さんが?」
「もしかしたら、アステラス王国で流行していた織物なのかもしれないわ。鑑定してもらいましょう」
レイラがそう提案したので、一行は城の鑑定士の元を訪ねて行った。
***
鑑定士は、分厚い資料をぱらぱらとめくりながら、虫眼鏡でじいっと織物を見る。
「間違いありません。これはアステラス王国西部のカミディア村で発祥した織物“ビアンカ”です」
カミディア村とは、アステラス王国の辺境にある小さな村だ。
「王国全土に広まり、周辺国からもその美しさを買われ、市場で取引されていたようです。しかし常に新しいものを求める世間の風潮で、時代の経過と共に価値が弱まっていき、また煌帝国の上質な絹の輸出もあってか、十年ほど前から貿易品として取り扱われなくなっております。ですが、女王様がこの織物を受け取ったということは、まだ王国各地に文化として根付いているのでしょうね」
マリアが身を乗り出して尋ねる。
「ということは、職人さんが今も残っているんですか?」
「ええ。ですが、ビアンカが流行しなくなって以来、その多くが失業したか、自分でその職を捨てたかと思われますので、恐らく職人は王国に数える程しかいないかと」
「そうなんですね……」
がっくりと肩を落とすマリア。
「女王様、ビアンカに興味をお持ちで?」
「はい。実は、アステラス王国の新たな貿易品にしようと思っているんです」
その発言に、皆が驚いた。
「はぁ!? あんた、なに言ってるのよ! 一回売れなくなった物が、また売れるわけないでしょ!?」
「そうよ、マリアちゃん。確かに素敵な織物ではあるけど、時代の風潮ってものがあるわ。皆のニーズに合った商品じゃないと……」
フィアとレイラが反対するが、今日のマリアは珍しく強気だ。
「わかってます。でも、私、この織物をもう一度売りたいんです。せっかくのアステラス王国独特の文化なのに、このまま埋もれさせてしまうなんてもったいない。わがままかもしれないけど、私…」
「いいんじゃない」
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ちぇりい(プロフ) - のどかさん» コメントありがとうございます! 続きを更新できるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2015年11月5日 6時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
のどか(プロフ) - お久しぶりです!この小説も第三弾ですね、前回の展開がやばすぎて(フィアちゃんかっこよすぎですよ。)これからも頑張ってください!続きが気になって仕方ないですー! (2015年11月3日 22時) (レス) id: c4d22bd61b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぇりい | 作成日時:2015年11月1日 17時