第106話 帰国 ページ28
いよいよ、全ての会議が終わり、マリアたちが煌帝国を発つ日がやってきた。
皆それぞれの荷物を持ち、船着き場に集合する。練兄弟は来ておらず、城の窓から様子を伺っていた。
紅炎の側に控えている青秀は、珍しく肩を落としてしゅんとしている。
「はぁ…結局ルカちゃん目も合わせてくれなかった……」
牢屋で辱しめようとして以来、ルカはすっかり青秀(と蛇)に怯えてしまい、たまに会えた時に話しかけてもすぐに逃げられてしまうようになっていた。
「俺だって本気であんなことしようと思ってたわけじゃねぇのに。ただ、やれたらラッキーぐらいで……」
「自業自得だなァ」
「な!? 『ガードが固い女は弱ってる時に攻めれば上手くいく』ってけしかけてきたのは楽禁殿じゃないっすか!」
「ン? そんなこと言ったっけな〜?」
「とぼけないでくださいよ!」
「うるせェな。調子に乗るなよ蛇ガキが」
楽禁がいつものように青秀の頭を小突く。
その隣では、忠雲が遠くにいるフィアをじーっと眺め、昨日あたりに彼女に言われた事を思い返していた。
『あんたなんてすぐに追い越してやるんだから! 次あたしが来たときはまた勝負しなさい。 約束だからね、忠雲!』
そういえば名前を呼ばれたのは初めてだった気がする。年下に呼び捨てにされたのは気に食わないので、今度は様付けくらいはさせてやろうと男は密かに思っていた。
紅炎は、仲間と楽しげに話しながら船に乗り込むマリアを見て、不気味な笑みをこぼした。
(調子に乗っていられるのも今のうちだぞ。すぐに地獄へ叩き落としてやる。
絶望にうちひしがれるお前の顔が本当に楽しみだ、女王マリア。その後はたっぷり苛め抜いてやろう)
紅明もそんな兄の横で、決心を固める。
(あなたの大切なご友人を奪ってしまう事になります。どうか許してくださいね、メイ殿。
まあ私が手を回したと知られなければ、今まで通りの関係を築けるでしょう)
煌の新たな企みなど露知らず、マリアたち一行は期待に胸を膨らませ、アステラス王国へ帰って行った。
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ちぇりい(プロフ) - のどかさん» コメントありがとうございます! 続きを更新できるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2015年11月5日 6時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
のどか(プロフ) - お久しぶりです!この小説も第三弾ですね、前回の展開がやばすぎて(フィアちゃんかっこよすぎですよ。)これからも頑張ってください!続きが気になって仕方ないですー! (2015年11月3日 22時) (レス) id: c4d22bd61b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぇりい | 作成日時:2015年11月1日 17時