第74話 ―――* ページ41
国が、燃えていた。響き渡るのは、家から家へと激しく燃え移る炎の轟音と、パチパチと花火の様に鳴る火の粉の音。そして、泣き叫ぶ人々の声だった。
思わず目と耳を覆いたくなる様な光景から逃げずに、ヴァンスはただただ、目の前の敵と戦い続けていた。煌帝国軍は、彼の力強く素早い攻撃に、次々と倒れていった。
仲間とは散り散りになってしまったが、いける。このまま戦っていけば、勝てる。
立ち向かってくる兵士を確実に仕留めながら、男はそう確信した。
(この戦が終わればきっと……俺たちは幸せになれる。待っていろよ、ルカ。兄さん、必ず帰るからな。もうお前に不自由はさせない)
立っていた最後の一人が断末魔を上げて倒れた。
ヴァンスは額の汗を拭い一息つくと、辺り一帯を見渡した。
(これで全部か。…………!)
ふいに、ぞわぞわっと身の毛がよだった。
足音と共に、近づいてくる5つの大きな影。
『あの軍勢を一人で倒すとは。なかなかやるな』
炎の様に紅い髪を持つ甲冑を着込んだ男が、ほくそ笑んだ。男の側には、蛇やら豚やら、様々な動物の姿をした、異形の者たちがいた。
『まさか……お前が、練紅炎…………?』
その事実に気づいたヴァンスの中で、沸々と怒りが沸き上がり、次の瞬間、それは爆発した。
自分の国を陥れた煌帝国の皇子。自分と妹に過酷な運命を強いた悪魔に、怒りをぶつけずにはいられなかった。
ヴァンスは、神槍ダスカロンを強く握りしめると、敵を討つべく突進していった―――。
◇◇◇
村人の避難を終えたルカは、なかなか帰ってこない兄を心配して、戦場へと向かっていた。
(兄さんには集会所を出るなと言われているが……じっとしている訳にもいかないしな)
少女が目的地を目指して歩いていると、前方によたよたとこちらに近づいてくる人影があった。ルカは腰に差していた剣を抜き、構えをとったが、その人物に気づくとすぐに剣を鞘に納めた。
『兄さん!』
少女は歓喜の声を上げた。しかし、兄の姿を見て、その顔から笑みが消える。
体中についた痛々しい傷や痣。地面に滴り落ちる血。骨も何本か折れている様だった。
大きな槍を引き摺りながら歩いていたヴァンスは、その場に崩れ落ちた。慌てて駆け寄るルカ。
『兄さん!? どうしたんだ、これは……』
『大物…と、出くわし…たんだ』
『でも、逃げてきたという事は、倒せたんだろう!?』
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真冬(プロフ) - いいえー。更新頑張ってくださいね(о´∀`о) (2015年7月2日 11時) (レス) id: f157971441 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - 真冬さん» なるほど…レイラさんは大人の色気、フィアはツンデレラブリーですもんね! ありがとうございました。 (2015年7月2日 7時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
真冬(プロフ) - お久し振りです(*´ω`*)そうですね、やっぱり、紅炎様 ファンなので紅炎様ですね。あ、でもレイラさんとフィアが、好きです。続き、楽しみにしてますよ(о´∀`о) (2015年6月26日 22時) (レス) id: f157971441 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - 真冬さん» 「頑張って」の一言だけでも十分嬉しいですよ! ホント、真冬さまは神様です! ありがとうございます! (2015年6月21日 18時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
真冬(プロフ) - ちぇりいさん» 返信遅れましたが、今回もまた続きが気になりますね♪何か、頑張ってくださいしか言えてないのですけどごめんなさい。だけど、とっても応援してますよ( v^-゜)♪ (2015年6月21日 11時) (レス) id: f157971441 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぇりい | 作成日時:2015年5月30日 0時