第30話 国王目指して三千里 ページ35
マリアがそう答えると、老婆は真剣な面持ちになり、彼女の顔をじっと見つめた。周りの通行人も、ふいに静かになる。
「ほう…あんた、どうしてそんなに王になりたいんだい？ 何か欲しいのかね？ 富か？ 名声か？ それとも男か？」
「いいえ。私が欲しいのは…みんなが幸せに暮らせる王国です」
さっきまで俯きがちだった少女は、老婆の瞳をしっかりと見据えて言い放った。
「煌の傘下に入らずとも、一つの国としての独立を守り国民が飢えずに生きていける―――そんな王国を作りたいんです。だから私は王になりたいんです。私を応援してくれる人たちのためにも。そして…私に夢を託していった人のためにも」
そう言いながら、彼女はマーサのことを考えていた。
あの夜マーサが自分に厳しいことを言ったのは、自分を強くするためだったのだとマリアはわかっていた。彼女は、もっと不意を突けばマリアを殺すこともできたはずだ。だが、あえてマーサは自分が死ぬ道を選んだ。一人の少女にアステラス王国の未来を託して。
だから、彼女の思いを無駄にしないためにも、絶対に王にならなければいけない、とマリアは決意した。
「私が、絶対にアステラス王国の国民の皆さんを幸せにすると約束します。ですから、皆さん…どうか、この私に…選挙で投票してください！ お願いします！！」
マリアが頭を下げた後、暫しの間その場が静まり返っていたが、老婆が呟いた。
「ワシらは、自分たちが幸せじゃったらそれで良いと思っとった…いや、思おうとしとったんじゃ…。他の貧しい村や街から目をそらさんと、辛くて生きていけんかったからのう…。でも、この頃思うとうたんじゃ。『このままじゃいかん。国そのものを変えんと、皆幸せになれん』と。お主らはどう思う？」
老婆が訪ねると、街の若い男衆が答えた。
「俺たちも、婆さんと同じことを思って、夜中ずっと話し合ってたんだ。今のままで良いのかって。貧しい村に援助したり、出来る限りのことはしてるけど、それだけじゃ人々は救われない。もっと、国が親身になって国民を守らなきゃいけないんだ」
「そうね…この国の貴族や官僚たちは、自分たちの保身のことしか考えてないわ。煌帝国に内政に干渉されても、怖がってペコペコ頭を下げるだけだもの」
男衆の言葉を皮切りに、黙っていた街の人々が声をあげ始めた。
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ちぇりい(プロフ) - ノルネットさん» コメントありがとうございます。すみません、話的にどうしても名前の決定が必要でした。皆様には主人公ではなく読者としてこの作品を見ていただきたくて…ご期待に添えず申し訳ありません。 (2016年2月16日 19時) (
レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
ノルネット - 名前変換ができると嬉しいです！ (2016年2月6日 23時) (レス) id: ed849dd137 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - ユートピアさん» コメントありがとうございます！ 更新頑張るので、どうかこれからもよろしくお願いいたします！ (2015年5月17日 9時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
ユートピア - とてもおもしろいです！続き楽しみです！頑張ってください (2015年5月16日 22時) (レス) id: afcfdd1663 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりい(プロフ) - のどかさん» はい！ 私も早く紅炎様を出したい一心で機をうかがっております。。 選挙編頑張って書きます！ (2015年4月22日 23時) (レス) id: 19c12415ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちぇりい | 作成日時：2015年3月1日 9時
