⥥ ページ13
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「う゛っ…ぐっえ゛、っ…」
「っ、おい…本当に大丈夫なのかよ」
彼は私の後を追って、百合の花を吐き出す私の背中を優しい手付きでさすってくれる。その優しさも辛かった。でも、彼を困らせたくはなかった。好きとか愛してるとか言って欲しいとは言いたくとも言えなくて、きっと言ったら彼は複雑な表情を浮かべて、罰の悪い顔をして悪い、とだけ言って決してその言葉を言ってくれることはないのだから。
「うん、…気にしないで、春千夜さん。大丈夫、だから」
もう言わないようにしよう。だから私は笑って力無く頷いたのだった。それなのに、何故か彼こそが私よりも何倍も苦しそうな顔をして私を背中から抱き締めて息苦しいほどきつく抱き締めたのだった。言葉の代わりに想いを伝えてくれているかのようだった。
*
私が春千夜さんと情を交わしたのは後にも先にもあの衝動に任せた一度きりだった。ふと私は、彼を喜ばせてあげる方法はないか、と考えてフォークである彼に私を少し味わってもらえば、と考えた末に次会うことになった日、自分の指先をほんの少し切ってその血を唇にのせた。自分にしてはかなり思い切った行動をしたな、と恥ずかしさも覚えた。
彼は本能で視界に私を入れた途端にそれに気付いた。遠慮がちに抱き締めて、いいんだよな、と一度私に確認してお酒に酔っているような熱を孕む沈み込むような瞳でゆっくり絡み合うようなキスをした。彼は私の舌を噛んだ。
「…っい、…」
ほんの少しの痛みを感じたが、血が滲む舌をゆっくりゆっくり味わって絡めとっていき、やんわりと快楽に染められ痛みは簡単にも忘れ去った。こんなに幸せでいいのか、と内心感じていながらも、自分の手は彼と離れることを拒んでしっかりと彼の服の裾を掴んでいた。
しかし、次の瞬間私は彼を突き飛ばした。強い目眩と不快感、すぐにまずいと気付いた。彼にこの病を移したくない、彼に背を向けて酷く咳き込み血のような花弁を手の中に吐き散らした。キン、と激しく不快になる耳鳴りまでしてきて、あぁもう私駄目そう、と悟ってばったりと音を立てて私は倒れ意識を失った。
「ごめ、なさい…」
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パチンカスヱ(プロフ) - 凛愛さん» ありがとう😌💕こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとう😌 (2021年12月30日 8時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 完結おめでとうございます!表現ひとつひとつが刺さるお話でした…!!たった一度の恋をこんなにも儚く美しく書ける文才に感嘆するばかりです。書いてくれてありがとう!!ココくんの新作も楽しみにしてます🥺🥺 (2021年12月26日 20時) (レス) @page17 id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - 完結おめでとう!!泣きました…素敵なお話をありがとう…😭😭 (2021年12月26日 13時) (レス) @page17 id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 桜峰瑠璃さん» 嬉しいです……!!!! 一緒に出頭しましょう🥰 (2021年12月2日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
桜峰瑠璃(プロフ) - ヤバい!!!全性癖にぶッ刺さる!()しゅき…興奮する!!!!!(通報案件) (2021年11月30日 17時) (レス) @page5 id: 643076eff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パチンカスヱ x他1人 | 作成日時:2021年11月24日 6時