異端 ページ5
__波の音、鳥がさえずっている。
冷たい風が少ししょっぱい。
私は目を覚ました。
「！？ここは…」
体はびしょびしょ。見たことない景色。
ありえないほど大きい樹木が並んでいる。葉は青々しく光り輝いていて漆黒の花が咲いている。
何より知らない建物が建ち並んでいるのが遠くに見える。人が多いのか愉快な音楽と歌声、話し声が遠くから微かに聞こえてきており近くには船がひとりでぷかぷか浮いていた。ここは港町？
あの状況で助かった？島に流れ着くなんてありえる状況ではなかったはずだ。
「う、うう…な、に、」
「まこと！？」
隣でまことが倒れてたらしい。
同じくびしょ濡れで、長い前髪を顔にへばりつかせて砂だらけの手を振り払う。
「何ここ？天国？」
いいや、知ってる。私は確かにここを知っているのだ。だけど、、、思い出せない。
「なんか胸騒ぎがするよ、まこと。
何か、良くないことに巻き込まれた気がする。」
「やだ、やめてよ。とりあえず人が多いところまで行って帰る方法見つけよ？僕たちここに流れ着いたわけだし、帰れないことないでしょ？ねえ？」
「いや、どう見てもここは私たちが知ってる世界じゃないよ。いくら私らが、住んでる島からでたことがないからって、こんな所普通じゃない。それに…」
それに、なんだ？
私、何を言おうとしたんだ？
「それに、何？じゃあ帰れないの？やだ、そんなのやだよ。｣
まことの顔は赤かった。それは海風に当たったものではなく、日に照ったわけでもないだろう。
「おちつこう、まこと。私たちは生きてるの。それだけは確かでしょ？見える街までどれくらいかかるか分からないけど、まことの言う通り行ってみようか。」
「…うん。ポジティブにいこうか！こんなことを楽しめないなんて僕じゃないよね！」
まことの表情が分からなかった。見れなかった訳では無い。本当は顔なのか言葉なのかが。
きっと私たちは異端な状況に巻き込まれたのだろう。トリップしたと考えるのが無難？
私たちは森の中の細道を進むことにした。
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作者名：パルる | 作成日時：2018年9月25日 21時
