探偵事務所ｰHit the floorｰ (ページ28)

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｢お久しぶです。先生。｣

私の前に現れたのは、元天才外科医の香里奈先生。

スーツなんか着て改まった様子。

何かと思えば、カズを引き取りたいと。

何を言ってるか全く分からないまま、曖昧に返事をしてしまって、

空になったカズの部屋(病室)を見てからやっと理解した。

あの子は社会に旅立ったんだと。

別れもなしに行ってしまうのかよ、と、診療をすっぽかし、カズの通う高校にくる。

｢カズ〜？｣

｢かずなり？｣

人混みをかき分けて玄関付近に行けば、香里奈と知らない男の人に頭を撫でられ、涙を拭き取ってもらってるカズ。

一瞬にして他人の元へ行ってしまった彼。

あまりにもあっさりしすぎてて、胸が張り裂けそうなくらい寂しい。

ああやって新たに彼を大切にしてくれる人が現れたのに、素直に喜べない自分が大嫌いだ。

もうこれ以上傷つきたくないと、後退る私。

｢せんせっ、、｣

背中にパフっと何かが抱きつく。

｢せんせ、なんでいるの？いつからいたの？式は？見ててくれたの？｣

私より少し背の小さい彼は上目遣いで私を見つめてくる。

そのあどけなくて可愛い顔が昔から何一つ変わってなくて、、胸が苦しいほど愛おしくなる。