PARACAGE 3rd【ars】 (ページ16)

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86.シニカルなシリアル。ページ16

その日は休みで、私はちょっとゆっくり寝てから洗濯をして遅めの朝ご飯。
一人ダイニングに座って、ヨーグルトをかけたシリアルを食べる。

ふと庭を見ると洗濯物が干してあった。
誰か洗濯したんだ。
平日だから潤くんとニノくんでは無いし、翔さんは皆で使うタオルとか洗ってくれるけど自分の服の洗濯は実家でしてる。
じゃあ智くんかな...？なんて考えてると、ダイニングに雅紀くんが入って来た。
多分、三日振りとか。

「あ...お久し振りです...」
「アハハッ！久し振りって何ー！でもちょっと久し振りなのかな？」

お久し振り、って雅紀くんはニッコリ。

「それ、誰でも食べていいやつ？」

対面に座って雅紀くんが私の食べてるシリアルを指差す。

「あ、これは私が買って来たんです」
「美味しい？」
「美味しいですよ！チョコ味で」
「へぇ」
「食べたい？」
「フフッ、食べたい」

彼が片手で頬杖をついて、あーんって口を開けてる。

「...あっ！一口じゃ足りないでしょ！？雅紀くんの分も持って来る！」

私は立ち上がって逃げるようにキッチンに駆け込んだ。

「でもAちゃんのでしょー？」

ダイニングから雅紀くんが声を掛けて来る。

「別にそんなの気にしないで下さい！まだ名前書いてないし！」
「アハッ！それここでは大事な事だからねー」

ボール皿にシリアルをザラザラと入れてヨーグルトを掛け、ついでに彼用のコーヒーも淹れてダイニングに戻った。

「ありがと！本当はお腹減ってたんだよね！いただきます」

手を合わせて頭を下げた雅紀くんが、ほっぺたをいっぱいにしながらモグモグ食べる。

「雅紀くん、今日はお休み？」
「んーん」

上目遣いに私を見て首を振ったのは、口がいっぱいで喋られないからみたい。
ちょっとの間モグモグして口の中身を飲み込んだ彼は「昼から撮影」って言った。

「そうなんだ。忙しいですね」
「俺の仕事は忙しい内が花でしょ？」

ちょっと挑戦的な感じで右頬がキュっと上がる。咲くんが見えた。

「雅紀くんって、映像作品には出ないんですか？」

何となくずっと気になってた事を訊いてみる。

「あー、ドラマとか映画とか？」
「うん」
「オファーはあるよ」

シリアルを食べ終えた雅紀くんが「でも、断ってる」って言いながら立ち上がる。

「そろそろ準備しよっかな。Aちゃんはお休み？」
「あ...はい」
「そっかー、なかなか一緒に遊びに行けないね」

少し唇を尖らせて、彼が笑った。