PARACAGE 2nd【ars】 (ページ32)

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67.あまぐり。ページ32

お風呂上がり、廊下に出るとニノくんが2階から下りてきたところだった。

「あ、A。もう寝る？」
「ううん、まだ寝ないですけど...」
「じゃあ一緒に甘栗食わない？」
「あぁ！朝貰って来てたやつ！」

そーそー、ってニノくんがダイニングに入って行ったから私も一緒に入る。
もう皆、自分の部屋に帰っててそこは真っ暗。
ダイニング側の電気だけを点けて、甘栗挟んで向かい合わせ。

「美味いけど、剥くのメンドーだよね」
「でも面倒だから、更に美味しく感じます」

剥いた栗をパクッと口に放り込む。甘い。美味しい。
ニノくんもモグモグしてる。

「でもさー、翔ちゃんってホント王子様だよね」
「え？」
「今日、Aが我が事のように話したアレ」
「あ！迷子の！本当にヒーローですよー」

パキパキと甘栗を剥く。
パキパキ。

「絶対にモテるだろうなぁって思いました」
「モテないはずが無いでしょ」

ハッ、とニノくんが笑った。

「翔ちゃんは高校の頃から爆モテだったよ」
「やっぱり！」
「女の子がキュンとする仕草や、ドキッとする言葉をサラッと投下すんのよ」

...するする、キュン仕草にドキ言葉、投下するする！ってゆーかされた！

「なに？思い当たる節でもあんの？」

思い当たる節だらけ！

「い、いやいや、そーなのかーと思って」
「しかも、計算じゃ無いから厄介なんだよね」
「無自覚？」
「そう、無自覚な女たらし」
「わー！罪深い！」

私が剥いて傍らに置いてた剥けた栗をニノくんに取られて「こらー！」って言うと「名前書いてないもん」ってパクッと食べられた。

「そんなんだから、卒業式なんて翔ちゃんに惚れてた女子の屍だらけよ」
「屍！」
「その気にさせるだけさせて、本人にそんな気は更々無いんだもん」
「あぁ...罪深い...」
「みーんなフラれちゃって、それはそれは悲惨な光景だったよ」

想像してみる。
...悲惨だ...その女の子達の気持ちを考えたら、もう胸が痛い。

「Aも気を付けなよ？翔ちゃんの女たらしスキルに惑わされたら泣きを見るよ？」
「それは大丈夫」
「まさか『私のタイプじゃないからー』とか言っちゃう？」
「そんな上から目線な事言いません！」
「って事はぁ...」

ニノくんがグイッと上半身をこっちに乗り出して来て、顔の距離が近付いた。
茶色い目が細くなる。

「他に好きな人が居る、って事かな？」

はっ！？っと開けてしまった私の口に、ニノくんが甘栗を放り込んでニッと笑った。