PARACAGE【ars】 (ページ15)

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15.黒髪。ページ15

こないだ買った最新号の『MEN'S STORM』に出ていた咲くんは、茶色かった髪を切り黒く染めていた。

それが大人っぽくて、色っぽくて、本当に似合っていたし益々好きだなって思った。

「この家、男ばっかでビックリしたでしょ？でもみんな安全だから大丈夫だよ！」
「雅紀は危ないけどな」
「アハッ！ちょっと潤ちゃん、その言い方は誤解を産むよー？」
「えー？誤解？そうかなぁ？」

とぼけたような表情をした潤くんがキッチンの方へ行ってしまって、私は一人で目の前の人と向かい合わせ。
スラリとした手脚と、黒い髪。

「......雅紀...？」

さっき、潤さんは彼をそう呼んだ気がする。

「うん。相葉雅紀です、よろしくね！」

サっと右手を差し出される。
...名前が、違う。

似てるだけで別人？
他人の空似？
世界には似てる人間が三人居るって言うし、その一人？

...そうだよね！引っ越した先に憧れの人が居たなんて偶然は、漫画の中でしか起きない。
そっか、ソックリさんだ！そうだそうだ！

そう思って、差し出された手と握手をする。

「お名前は？」

彼に訊かれて、そうだ名乗って無かったと思い出した。

「あっ...寺坂Aです、よろしくお願いします」
「Aちゃん」

握手してる手をブンブンと振られる。
ニッコリ笑った顔を、ジっと見てしまう。
右頬がキュっと上がる笑顔まで、似てる。......ってゆーか、同じ。

「え？なになに？」
「あ...いえ、何でも無いです...！」

慌てて手を離したら、ソファに座ってたニノくんが振り返った。

「もしかしてA、相葉さんのコト知ってんじゃないの？」

その言葉に、少し凪いでた気持ちがまたざわつく。

「あ、そうなの？」
「......あの...え？」
「俺のお仕事、知ってる？」
「......あー...」

思わず一歩、二歩、と後ろに下がってしまった。

「おっと、危ない」

声と共に後ろから両肩に誰かの手が乗って振り向くと、翔さんが「ぶつかるところでした」って笑ってる。

「わっ、すみません！」
「いえいえ。あ、雅紀帰ってたの。おかえり」

翔さんに彼が「ただいま」って応えると、翔さんもニノくんの横に座って床でニゴとゴロゴロしてる智さんと三人で談笑し始めた。

「名前違ってるから混乱してんじゃないの？」

キッチンからコップを持って出て来た潤くんが言う。
中身が白い。きっと、あの牛乳だ。

「そっか、『咲』って言った方が良かったかな」

彼が、笑った。