【d！】餞を君に。【男主】 (ページ1)

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プロローグページ1

・・・

俺たちの夢の詰まった国は、沢山の悲痛な叫び声と共に終わりを告げた。

国全体が燃えている。

活気のあった笑い声溢れる街は、今や血の海へと変わって叫び声のみが木霊する街へと変わってしまった。

城の裏手にあった森も緑生い茂る美しい森から一変し、今やその姿など微塵も残っていない。森に生息していた野生動物達も無惨に殺され、そして今や炎に包まれている。

「……。」

俺はやっとの思いでここまで来れた、処刑台近くの家の物陰へと駆け込む。息を整えるためだ。ここから先はもっと慎重に動かなければ。

息を整えている間、俺は目を瞑って先程直接見た城を思い出していた。

城の被害は特に酷かった。建物は跡形もなく残っておらず、轟轟と音を立てて激しく燃えていた。敵国からの攻撃を全て受けたのだ。それだけ言えば伝わるだろう。

唯一残っている残骸の頂きには敵国の国旗が立てられていた。俺はその光景を一部始終見届けているだけだった。

この城がここまで持ってくれなければもっと多くの犠牲者を出していただろう。その時間に生き残っていたほぼ全ての人達は安全な地下シェルターへと逃げる事が出来た。

今回の戦争は力を持つ国のほぼ全てが敵なのだ。それも奇襲で、だ。逆によくここまで持ちこたえてくれたと思う。

近くから敵兵の足音が聞こえてくる。その足音は徐々に近づいてくる。目を瞑り先程見た映像を思い起こしていた俺は目を開けすぐに現実へと意識を戻す。

深く深呼吸をした後、息を潜め物陰に隠れ通り過ぎるまで身を隠す。

俺は皆んなのように強くないから、見つかって仲間を呼ばれてしまっては逆に殺されてしまうからだ。その代わり、俺は隠れる事については誰よりも得意だった。

「今度こそは……」

通り過ぎた敵兵を見届けた後また移動を開始する。

移動中、足元に目を向ければ当たり前かのように死体が転がっている。地下シェルターへとほぼ全ての国民は逃げれたがもちろん病気や怪我などで逃げ遅れた国民も少なからずいた。

そんな国民は敵兵に無惨に殺された。慈悲などなかった。

遠くから微かに木の階段が軋む音が聞こえた。音は三人分だ。その三人が誰なのかを俺は既に知っている。

処刑人が二人。そしてその二人に拘束されている＿＿＿＿

(我らが唯一の生き残り。グルッペン･フューラー)

今度こそ、助けだしてみせるから。
それが皆んなを見殺しにしてしまった唯一の償いだから。