映画館 ページ27
その後、あと1回あと1回とチャレンジしてみたのだが、なかなかタイミングは合わず、わたしは弓弦くんの手に触れられないまま2日後を迎えた。
ここまできたらさすがにわかる。
まちがいなく避けられている。
弓弦くんは手を繋ぐのは嫌だったかな。
昼休みは相変わらずガーデンテラスで一緒に食事をしてくれている。
「A、昔の映画で見たい映画があるとおっしゃってませんでしたか？」
「え？ああ、うん。あったね」
「実はここからは少し離れた場所になりますが、リバイバル上映をしているそうなんです。よろしければ今日の放課後見に行きませんか？」
え、映画館に行くってことだよね？
これってデートのお誘い！？
やったー！！
「行く！」
そうしてわたし達は放課後映画館に向かった。
そこは都市部から外れた場所にある小さな映画館で、座席もあまり段差のない椅子だった。
みんなで上を向くように座るその映画館は、なんだかタイムスリップしたみたいでドキドキと胸を脈打つ音が聞こえる。
全員の心音が重なった時、上映は始まった。
暗くなった辺りを見回すと平日夕方のリバイバルだからか人はあまりおらず、年老いた夫婦や疲れた大人たちばかりだった。
弓弦くんは中華服を着て映画に出ていたなぁ。
あれも何度も観に行った。
物語も中盤に差し掛かり、恋人達が熱いキスを交わしている。
こちらの顔の方が赤くなりそうなそれを眺めているとふと左手に何かが触れた。
視線を向けると、弓弦くんの手がそっとわたしの手に重ねられていた。
え、嘘。
弓弦くんの顔はぼんやりと見える限りではこちらのことなんて見ていない。ただ手を重ねてきただけだ。
このタイミングで。
心臓がドクドクと跳ね上がる。
スーパーボールが跳ね返るように素早く。
ずるい、ずるいですわ…弓弦くん。
いつもは手を繋いでいいかも聞いてきそうなのに。
よりにもよってこんなタイミングで手を握ってくるなんて。
平静を装いながらも全くといっていいほど映画の内容はそれから頭に入ってこなかった。
結局弓弦くんは、エンドロールが終わるまで手を離さなかった。
エンドロールではむしろきゅっと強く握ってきた。
この時間の終わりを惜しむかのように。
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宝(プロフ) - あーるさん» コメントありがとうございます！弓弦お好きなの嬉しいです〜(*^^*)おもしろいと言ってくださってありがとうございます！応援もありがとうございます！最後まで走りきります (7月5日 20時) (
レス) id: 2151f87f60 (このIDを非表示/違反報告)
あーる(プロフ) - 弓弦の夢小説少ないので嬉しいです(;_;)すごく面白いです応援してます！ (7月4日 23時) (レス) id: cb84109612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宝 | 作成日時：2023年7月3日 19時
