103．昨日2人でいたの？ ページ3
「一応聞くぜ、どうするんだ？ツナ」
「……うん」
山本のその言葉に頭を抱える。白蘭との戦いまで残り1週間しかないというのに、修業は上手くいかず行き詰まっていた。そんな中、ずっと眠っていた他の問題は突然やってくる。……Aにも、やっと話しかけられたと思ったのに。
＿＿共同生活をボイコットします！
私達も一緒に戦いたいの、と京子ちゃんに言われた言葉が頭を過る。京子ちゃんがそんなこと考えてたなんて知らなかったな。危険な世界に巻き込まないためにも俺達の戦いのことなんて知らなくていいと思っていた。
「やっぱり、今の状況やこれからの戦いのことは話せないよ……」
ふと浮かぶのは先日の戦いでの出来事。白蘭が見せた真六弔花の姿は人間とは思えないもので、あんな壮絶な戦いに巻き込めるわけがない。
初めて未来にきてラルと戦ったとき、Aは怯えたような表情をして酷く怖がっていた。俺達が何をしているのか知って、リング争奪戦のときのように人の痛みを悲しみ怒ることができる彼女の怯える姿は二度と見たくない。
「ったくあいつら、10代目のお気持ちも知らずに……俺も話さない方がいいと思います」
「まっでも、あいつらだけ知らねーってのも仲間外れみたいで可哀想だけどな」
「……それはそうだけど」
しーん、と静まり返るキッチン。A達がいつもはここで俺達の分までご飯も作ってくれてたんだよな。そんなことを考えていると、お兄さんが京子ちゃんには言ってはいけないと声を荒らげた。
その流れでとりあえず自分達で家事をすることが決まり、役割分担をしてから部屋を出る山本達を横目に先程から一言も話さない獄寺君に声をかける。
すると、何かを決意したような表情の獄寺君が俺を呼んだ。どうしたのかと声をかけると「……10代目のお耳には入れた方がいいのではないかと思いまして」と表情の見えないまま彼は呟く。
「A、知ってるんスよ」
「……え？」
「あいつだけ、未来のこと知ってるんです」
「どういうことなの！？」と衝動的に獄寺君の胸ぐらを掴んでしまう。「まさか、言った？」すんなり言葉にできたお陰で気になっていたことが浮上してくる。
そういえば、トレーニングルームから移動するときに山本が「昨日Aと2人でどこ回ってたんだ？」と獄寺君に質問をしていた。怒鳴る獄寺君の声が聞こえないくらい頭が真っ白になったあのときの気持ちは今でも忘れられない。
「Aと、昨日2人でいたの？」
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作者名：√A | 作成日時：2022年8月22日 13時
