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戦場の晩餐を、君と共に…其ノ参 ページ10

上条が目覚めたのは、あれから二時間後だった。

『……あれ、』

自分の部屋や探偵社では有り得ない程、寝心地の良いベッドの上。何処だろうかと周囲を見渡すが、何故か視界がぼやけてる。

「やっと起きやがったか…っておい、何泣いてんだよ」

『は?』

触れてみれば、確かに涙。
夢を見ていた感覚も無いのに、次から次へと溢れてくる。
ただ悲しくて、辛くて。心に重いモノが積もったかのような、気持ち悪さがあった。

中也は困ったかのように眉を下げながらも、上条の頭をあやすように撫でてやる。
昔と変わらない、温もりだ。太宰に似ているようで、どこか非なる感覚。
不器用さ、というものだろうか。手慣れた優しさを持つ彼とは違うのだ。丁寧だけどぎこちなく、壊れないように扱ってくれるようで。

これに身を委ねてしまえば、もう戻れなくなりそうだ。

(今は立場が違うんだから…もうこんなこと、しなくてもいいのに)

しかし、今だけは――
矛盾する気持ちを押し殺し、それに甘えることにした。



『ごめん…迷惑かけた』

「構やしねェよ。あと、起きたてで悪ィがこれ」

『嗚呼、今読む』

上条が呼ばれた“名目上”の理由は、中也が担当している長引いたマフィアの抗争の手助けだ。

手渡された資料を見れば、数で優勢なだけで彼の部隊が手こずる相手とは思えない。マフィアを潰そうと目論む、頭の回る質の悪い組織が背後にいるのだろう。

『今は停戦状態か……いつ再開する?』

「さァな、だがこっちから奇襲かけるのもアリだとは思うが」

手前もいる事だし、と付け加える。
上条の存在は向こう側には知られていない。ならば、確かに奇襲の好奇はあるだろう。

『…まあ、早く終わるならそれでもいいけど』

「じゃあ明日の夜、決行だ。俺は部下達に伝えてくる。準備しとけよ? 」

部屋に一人残された上条は、何となしに携帯を開けば敦からメールが来ていた。

『…うわ』

狂っている、としか表現しようのない太宰の写真付きだった。彼の様々な面を見てきた上条であるが、顔をひきつらせることしかできない。
そんな太宰の対処方を尋ねる旨が、文面の主なものであった。

しかし、このメールが来たのは朝方。現在の時刻ならば国木田が何とかしただろう。
出来ればこの状態に関わりたくない、というのが本音であるが。そして今の写真も、速やかに脳内から消去しておく。

『……あとは…何しよう』

上条が他にする事といえば、銃器の清掃ぐらいしか思いつかなかった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 男主 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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ロット - 更新楽しみにしています。また楽しい展開を待ってます! (2018年3月21日 20時) (レス) id: d561f39b52 (このIDを非表示/違反報告)
ファニー - 更新頑張って下さい!応援しています! (2017年5月5日 23時) (レス) id: ccbe8ec79d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 匿名さん» このお話にBL表現は出さないつもりです。ただ、念のためということで最初に書いただけですし、前編でも対象にはならなかったのでこのままでいきます。…長々と失礼しました<(_ _)> (2017年3月21日 9時) (レス) id: 4c92540543 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - BL表現が少しでもあるのなら、フラグを立てましょう。違反の対象となります。 (2017年3月20日 22時) (レス) id: 53d4575912 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朔夜 | 作成日時:2017年3月20日 20時

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