Murder on D Street…其ノ伍 ページ6
「…おい、どうした杉本?」
箕浦の声にも応じず、彼は顔を俯かせた。
「いくらこの街でも、素人が銃弾を補充するのは容易じゃない。官給品の銃であれば、尚更だ」
「何を黙っている杉本!?」
「彼は今、懸命に考えている最中なんだ。使ってしまった三発分の銃弾について、どう言い訳するかをね」
ハッと目を見開いた杉本。
彼の手は、腰のホルスターの方へ。グリップを握り、そのまま出されるかと思えばカチッと安全装置が外れる音がして――、
『…撃たせる訳無いだろ』
そこから銃弾が放たれることはなかった。
乱歩へと銃口が向けられるのを予期した上条が、咄嗟にそれを奪ったのだ。
持ち主に気づかれることなく、ひっそりと。
『生憎、“手癖”が悪くてな』
上条が杉本から拳銃を“盗った”のと、太宰が敦を思い切り押し出したのは同時だった。
杉本は敦によって地面に倒され、腕を背中に回され身動きが取れなくなる。しかしそれでも、自分は無関係だと叫ぶが――、
「逃げても無駄だよ。…犯行時刻は昨日の早朝、場所は此処から百四十メートル上流の造船所跡地」
「な、何故それを……!」
「其処に行けばある筈だ。君と被害者の足跡、それに消しきれなかった血痕もね。――斎の方は?」
『…
「まずは証拠、其の壱って訳だ。さて、何処か間違ってる所はあるかい?」
「どうして……バレる筈ないのに…」
全てを言い当てられ真っ青な杉本の傍ら、箕浦は静かに手錠を取り出した。
「…続きは署で聞こう。お前にとっては、最後の職場になるかもしれんがな」
山際女史は、ある政治家の汚職事件を追っていたらしい。大物議員の犯罪を示す証拠も、既に入手していた。か
しかしそれを抹消するため、議員は警官にするという見返りで、杉本をスパイとして使った。
そして、乱歩の推理通り、昨日の早朝。
脅しに拳銃を使いながらも、彼女に警告をすべく杉本は造船所跡地に呼び出し、殺してしまった。
自分が、彼女を撃てないのを分かっていたから、敢えて自身の頭に銃口を向けたのだ。しかし慌てて駆け寄った彼女に、誤って引き金を引いてしまった。
そして、助けを求めた議員の指示に従い、マフィアの偽装工作を施してから遺体を川に流した……。
「その証拠は今何処にある?」
取調室で乱歩の同席の元、箕浦が尋ねるが杉本は無言のまま。
「…ねえ、杉本くん。彼女の最期の言葉、当ててあげようか」
――ごめんなさい、だね?
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ロット - 更新楽しみにしています。また楽しい展開を待ってます! (2018年3月21日 20時) (レス) id: d561f39b52 (このIDを非表示/違反報告)
ファニー - 更新頑張って下さい!応援しています! (2017年5月5日 23時) (レス) id: ccbe8ec79d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 匿名さん» このお話にBL表現は出さないつもりです。ただ、念のためということで最初に書いただけですし、前編でも対象にはならなかったのでこのままでいきます。…長々と失礼しました<(_ _)> (2017年3月21日 9時) (レス) id: 4c92540543 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - BL表現が少しでもあるのなら、フラグを立てましょう。違反の対象となります。 (2017年3月20日 22時) (レス) id: 53d4575912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2017年3月20日 20時