淀みに浮かぶ泡沫は…其ノ参 ページ17
探偵社を出て、感じていた違和感が確信へと変わった。
(つけられてる、よな……)
見逃してしまう程ではないけれど、手練れらしい気配の消し方。この特有の感じはマフィア、しかもかなり上層部の者だ。
加えて上条を狙ってくるあたり、太宰もそこにいることは簡単に事実となった。
本当は自ら忍び込んで行こうとしていたのだが、これは想定内の出来事だ。
目についた角を素早く曲がり、路地裏の更に奥へと進む。
(…ついてきたのは1人。確かまだ他にも道があったから、もう1人と分かれているのか……)
そんなことを考えながら、足を止めることなく歩き続ける。
そして、2つの気配が合流した時、上条はようやく振り向いた。
『…この匂い、やっぱり広津さんだった。立原も久しぶり』
「ふむ、君も気づいているあたり鈍ってはいないようだ」
「上条よォ、俺達の狙いも分かってんだろ?――戻ってこいよ、マフィアに」
立原の言葉に、上条は目を細める。
分かっていたことであるが、実際にこの耳で聞くのはとても不快だ。自分の居場所を、探偵社を短絡的に見られているようで、この上ない苛立ちを覚える。
『俺が彼処に行って何になる?精々、死体処理が楽になるくらいのメリットしか、無いように思えるけど』
「君はやはり、自分の価値を分かっていないようだ」
『価値、ね…』
黒蜥蜴の精鋭を送ってくるあたり、首領は本気であるようだ。
だが、上条は言葉を濁しながら、先日の関西における抗争を思い出していた。
中也の配慮で別行動をしていたものの、もし自分と彼の配置が逆になったらどうしただろうか。――敵だけでなく、味方にも脅えられるあの視線。
それがどんなに裏世界で役立つものであっても、所詮は誰彼構わず恐怖心を沸き立たせるものだ。本当は、あってはならないものだ。
(……あ)
そう、探偵社であっても変わらない。これが事実だ。
「君が変わっておらず何よりだ。そしてこれは訂正なのだが、“鈍ってはいない”といったことを謝ろう。――光ある世界に足を踏み入れ、どうやら絆されてしまったようだ」
『しまっ!?』
気づいた時には遅かった。
背後に突然降り立った、新たな気配に対処しようと振り返るが、何故か力が入らなくなる。そして倒れていくその瞬間まで、自身の過信を呪った。
黒蜥蜴の精鋭に代表されるのは、広津や立原の他にもう1人。
暗殺に優れた、銀という者がいた。
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ロット - 更新楽しみにしています。また楽しい展開を待ってます! (2018年3月21日 20時) (レス) id: d561f39b52 (このIDを非表示/違反報告)
ファニー - 更新頑張って下さい!応援しています! (2017年5月5日 23時) (レス) id: ccbe8ec79d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 匿名さん» このお話にBL表現は出さないつもりです。ただ、念のためということで最初に書いただけですし、前編でも対象にはならなかったのでこのままでいきます。…長々と失礼しました<(_ _)> (2017年3月21日 9時) (レス) id: 4c92540543 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - BL表現が少しでもあるのなら、フラグを立てましょう。違反の対象となります。 (2017年3月20日 22時) (レス) id: 53d4575912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2017年3月20日 20時