戦場の晩餐を、君と共に…其ノ伍 ページ12
『中也、こっちは終わったけど』
敵の本拠地ビルの屋上に、先に中也の異能力で移動していた上条。見張りの男2人を喰い、残った衣服を隠した後に通信機で尋ねる。
「…よし、こっちも粗方終わったぞ」
下に戻り、部下を配置につかせた彼は、やや間をおいて返事をした。上条が腕時計を見れば、時間まであと数十秒ほど。
昔であればこんな緊張しなかったのに、今は深呼吸をいくらしても収まりそうにない。
「――奇襲開始!!」
しかし、体は勝手に動いてくれるらしい。
中也の鋭い声がするのと同時に、上条はスルッと階下に行く扉をすり抜け、静かに素早く階段を降りていく。
気配を探り、視界に敵の影が3つ現れると、自らの存在を悟らせることなく異能力を発動させる。まず2人が消えると、彼らの持っていたマシンガンが床に落ちた。それに気づいた残りの1人が振り向いたその隙に、背後に回って喰う。
作戦に協力する目的は、あくまで自分の“空腹”を満たすためだから、見回り程度の役割しか与えられない奴らは消してもいいだろう。
(…この階の見回りはあと5人……あの部屋にはもう少しいるか?)
角から様子を窺うと、上条にはまだ気づいていない。ただ、下で暴れているのに対処するので精一杯、といったところだろう。
中也のためにも、早く潰していった方が良さそうだ。
隠れていた場所から駆け出すと、一気に銃口が此方に向けられる。放たれた弾が幾つも体に掠り、酷い時には大穴を空けていった。どれだけ負傷しようと、上条は異能力で動き続けることは可能である。
それに恐れるほんの数秒の間で、彼らの命を刈られていくのだ。
マフィアの首領が冗談交じりに、“死神”と称したのはある意味、的を射ていたのかもしれない。
そんなことを考えていると、いつの間にか1つの部屋以外に、この階には気配が無くなっていることに上条は気づいた。
(頭と4人ってとこか)
目的の扉を堂々と開ければ、ボディーガードらしき者達がマシンガンを構え、奥には怯えて脂汗を垂らす頭が立っていた。
『…撃つなら開けた瞬間に撃てばいいものを』
「そ、それ以上近づくな!!でなければ――」
『撃つって?出来るものなら殺ってみなよ、ほら』
一歩ずつ近づいたところで、彼らは何も出来ない。
上条の期待するようなことは起きない。
どうせ臆病者だ。彼らも、…自分も。
『……やっぱり太宰だけか』
彼はそう小さく呟き、ボディーガードに異能力を発動させ、気絶させた頭を拘束した。
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ロット - 更新楽しみにしています。また楽しい展開を待ってます! (2018年3月21日 20時) (レス) id: d561f39b52 (このIDを非表示/違反報告)
ファニー - 更新頑張って下さい!応援しています! (2017年5月5日 23時) (レス) id: ccbe8ec79d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 匿名さん» このお話にBL表現は出さないつもりです。ただ、念のためということで最初に書いただけですし、前編でも対象にはならなかったのでこのままでいきます。…長々と失礼しました<(_ _)> (2017年3月21日 9時) (レス) id: 4c92540543 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - BL表現が少しでもあるのなら、フラグを立てましょう。違反の対象となります。 (2017年3月20日 22時) (レス) id: 53d4575912 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔夜 | 作成日時:2017年3月20日 20時