(仮) forth (ページ28)

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はぁ…ってわざとらしいため息を吐いた二宮さんはタイピングの手を止めて椅子の横にかがみ込んだ。
　

「もぅ…なんなのよ…面倒くさい、すんごい面倒くさい」

小言を吐きながらゴソゴソとバッグの中を漁り始めた。

急に何やってんだろ？って横目で見ていると、ぬっと立ち上がった二宮さんが片手に何かを持って近づいてくる。

頭にハテナを浮かべる私の肩を持つとクルンと回転する椅子を回して、自分の方に向きを変えさせた。

そして、突然の事にビックリしている私を無視して、耳にズボッと何かを突っ込んできた。

「わっ！え、何？」

「うるさい。あなたの趣味とか知らないから、とりあえず今日はコレで我慢しなさいよ」

「え？イヤホン？？」

耳に突っ込まれた異物を触って正体を確かめる。

「流石に落語は入ってないのよ、ワタシのケータイ」

ポチポチとスマホを操作する二宮さん。てっきり音楽を流してくれるのかと思って見ていたら、ニヤッと口角を上げで笑うから首を傾げてしまう。

「クフフ。新作、見せてあげる」

ズイッと目の前に差し出されたスマホに若干仰け反りながら視線を合わせて固まった。

「……大野…さん……？」

「うん。さっき撮ったの。撮れたてだから鮮度抜群よ(笑)」

「……大野さん…なんでこんな事に……」

白目を剥いて、大きく開けた口を極限にまで歪めた大野さん。ホントになんでこんな事に…。私の中の大野さん像が音を立てて崩れていく。

ショックで声を失った私の後ろからスッと伸びてきた腕。

「コラ、ニノ！誰にも見せんなっつったろーが！」

「いいじゃない！ワタシ気に入ってるんだから。皆に自慢したいの！」

「自慢になんねぇだろ！やっぱ消せ、消去だ、消去！」

「やだぁ〜」って逃げ回る二宮さんを大野さんが必死の形相で追いかけ回す。その光景を皆思い思いの表情で眺めた。