(仮) forth (ページ29)

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「はぁ、疲れた……」

大野さんとの追いかけっこを終えた二宮さんが、パタパタと首元を仰ぎながら席に戻ってくる。

まだ残っていた冷めたコーヒーを飲み干して、首をポキポキならすと、ニヤッと口角を上げた。

「何とか死守できた」ってほくそ笑む二宮さん。

あれ？さっき大野さんに捕まって床に転がされた時、ケータイ取り上げられてたよね？

てっきりその時に写真は消されたんだろうなって思ってた。実際、大野さんもガッツポーズしてたし、二宮さんも項垂れていたはず…

そんな私の疑問顔に気付いた二宮さんがおいでおいでと手招きしてくる。
　

キャスター付きの椅子ごと二宮さんに近づくと、デスクの下でケータイを操作して「あった、あった」って呟く。

何だ？って覗きこめば、消されたはずの変顔大野さんが画面いっぱいに映し出されていた。

「おじさん、甘いんだよ。今はね、本体のデータ消したくらいじゃ安心できないのよ。自動でバックアップされちゃう時代なんだから(笑)」

口元を腕で覆ってクスクスと肩を揺らす二宮さんは、写真が消されない事を分かってて、ただ大野さんとの追いかけっこを楽しんでいただけだった。

呆れて物が言えない私に「ナイショね」って釘を指してくるから、冷たい視線だけ向けてデスクに戻った。