(仮) forth (ページ21)

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急に早鐘を打ち始めた心臓。喉がキュッて閉まって声が出せる気がしない。

「落ち着こう。大丈夫」って心の中で自分に言い聞かせる。そして、もう一度チラッとスマホの中の大野さんを確認する。

大丈夫。ココは会社。今いるのは安全な所。高校とは違う。

ゆっくり息を吸い込む。

「…天野です。よろしくお願いします」

「はじめまして、櫻井です」

スッと立ち上がった先輩に、ビクッと肩が小さく跳ねた。

ニコッと人当たりの良さそうな笑顔を向けてくるけど、私は後退りしそうになるのを堪えるのに必死で笑顔が返せない…

「…大丈夫。俺がいるでしょ」

ボソッと耳に届いた二宮さんの声。肩を小さく、ゆっくりとリズムを取るように叩かれて、少しずつ体に入りまくった力が抜けていく。

「この人ね、おじさんの専属なの。前話したでしょ？」

「ああ、恐ろしく仕事が早いっていう、あの噂の？へぇ……あっ！ってことは昨日早退した子？」

「うん、そう」

「そうなんだ。大丈夫だった？もういいの？」

「ぁ、はい…ご迷惑おかけしました…」

「ん？俺は全然だよ(笑)」

「だよね。強いて言えば、皆の注目があなたに奪われたってくらいだから」

「ンハ！確かに！」

「お株奪われちゃったよね、翔ちゃん(笑)」