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「いいのかな?私一人部屋ひとり占めして。
それにお母さんやおじさんが…」
「父さんのことはほっとけ。
2人ともいい大人だし、Aが見張ってなくても大丈夫だ。
おばさんからも帰りが遅いから心配だって相談受けてたしな。先におばさんに話したけど、俺がいるなら安心して寮に任せられるってさ。」
お母さんは私には何も言わなかった。
マネージャー頑張ってるのねって、応援してるからって言ってくれてた。
「部員のみんな賛成だぞ。Aが自主練手伝ってくれなくなるのはキツイって。
それにAが怖い思いするほうが、みんなやなんだよ。」
なんにもできない、ちっぽけな存在感だって思ってた。野球に一生懸命打ち込んでる人の手助けがしたくて、入部してから私なりに必死にやってきた。
それを認められた気がして嬉しくて泣けてくる。
「泣き虫。今日、ずっと泣いてんじゃん。」
「これはさっきとは違うもん。嬉し泣き。見ないでよ。」
「嬉しくても泣くな。笑ってろ。
みんなさ、Aや他のマネージャーの笑顔に救われて来たんだから。」
そんな存在になれてるの?
大げさな気もするけど、素直に受け取っておこう。
「もっともっともーーーーっと頑張る。」
「ほどほどにな。」
寮に帰ると先輩始め同級生もみんな歓迎してくれた。
「膝擦りむいてんぞ。」
「あ、転んだんだった…大丈夫。絆創膏貼っとく。」
倉持くんが傷に気づいて、救急箱を持ってきてくれた。
「座れ。」
「や、自分でやる。」
「こういうのはな、自分だと加減しちまうんだよっ」
容赦なく消毒液が傷口に浴びせられた。
「ひぃぃぃーー、痛い痛い!染みる!」
「うるさー」
ペちんと大きな絆創膏が膝に貼られた。
「ったく、俺のこと振り切って走るから。どうせその時転んだんだろ?」
「一也が怒鳴るから。」
いつもみたいにじゃれ合う私達。
私は気づかなかったけど、一也はずっと楠木先輩を威嚇してたらしい。
何か言いたそうだったと、白洲くんが教えてくれた。
明日は土曜だから、引っ越しにはちょうどいい。
着替えや教科書とか必要最低限のものを取りに帰らせてもらった。
「ごめんね。お母さん心配かけてたんだね。」
「親は心配するのが仕事だからね。たまには帰ってきなさいよ。」
「うん。」
「おじさんも…ちゃんとご飯食べてね。」
「大丈夫だから。心配いらないよ。」
「いってきます。」
いってらっしゃいって2人に見送られた。
電車の中でちょっぴり泣いちゃった。
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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時