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「おまわりさーん!こっちこっち!女子高生が絡まれてる早く!」
一也の声がした。
その声に酔っ払い達は、手を離して反対側に散っていった。
「A!!」
練習中でもなかなか見せない大量の汗をかいて肩で大きく息をしてる。
「かずや…」
ホッとして、来てくれたのが嬉しかった。
一也の胸に飛び込んで、怖かったと伝えた。
ギュッとその逞しい腕で私を包んでもう大丈夫だからと背中を擦ってくれる。
「落ち着いたか?」
「うん。ごめん…服濡らしちゃった…」
一也のジャージは私の涙で濡れてしまっていた。
「タオルにでもなんでもしたらいい。いつもは威勢いいのに、そんなに怖かった?」
「酔っ払いに絡まれたのは初めてだったから。いつもはちゃんとごめんなさいって言えるし。」
「いつもは?絡まれたの初めてじゃねぇのか?」
駅や電車の中で声かけられることはあるけど、その気ないってわかったら、それ以上しつこくされることなかった。
「なんで言わねぇの?」
「それは…」
「ただでさえ、遠距離通学なのに…
ナンパされてるなんておばさんもうちの父さんも知ったらひっくり返るぞ。」
だから、言えないんだよ。
みんな心配してくれるから。ちゃんと自分でできるから、心配かけたくなかった。
「言えば2人に言っちゃうでしょ?
野球部の自主練にも出れなくなっちゃう。
早く帰れって言われるのわかってたから。」
それはやだ。
一也が頑張ってるの、近くで見てたいよ。
この前みたいに一也の頑張りをバカにする奴は私が何度でも言うよ。
プレーを見てから言えって。
投手を輝かせることができる捕手なんだぞって。
何度だって言う。
「バカだなぁ…」
「え?!ひどくない?」
「バカだよ…まじで。」
言葉はひどいのに、一也の表情はすごく優しい。
とりあえず、学校戻ろうと手を引かれた。
そこで聞かされたのは、結城キャプテンからの提案。
マネージャーの中で遠距離通学してるのは、私だけ。
3年生が引退したから、流石に県外の人は寮を出ないけど、都内の人は自宅から学校に通うようになった大勢いるらしい。
だから、寮の部屋に余裕が結構ある。
その一室を私が使ってはどうかって話があるみたい。
部長たちも監督も賛成してくれてるって。
その話をしにグラウンドに言ったのに、楠木先輩とああなってたから、すっかり頭から抜け落ちてたって。
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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時