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美味しい夕食をご馳走になって、温かいお茶を飲んでいると、一也がこれやるって、小さな紙袋に入ったのを渡してきた。
神社の名前が印刷されてる、アレ。
「私に?」
中を見ると合格祈願と書かれたお守りが入ってて、ピンクのかわいいやつだった。
「俺だってお前が、青道に来るの楽しみにしてんだから、肩の力抜いて全力出せば大丈夫だ。
待ってるからな。」
一也も応援してくれてる。
頑張ろう。
頑張るから。待ってて。
「ありがとう」って言いたいのに、涙でうまく伝えられない。
「わかったから泣くなよ。
泣くほど嬉しかったのか、そーかそーか。」
犬をわしゃわしゃするみたいに頭を撫でられた。
それが照れくさいのか、心を読まれた事が悔しかったのか、揶揄われたからなのか…わけわかんない感情に翻弄された。
そこにおじさんが帰ってきて、ギョッとしてる。
「一也、お前…Aちゃん泣かしたのか?」
「ちげぇって…濡れ衣!」
「おじさーーん、一也が優しすぎて泣かされた!」
子供のときのようにおじさんの背中に回って、作業服の裾をギュッと握った。
一也に意地悪された時はそうやってよくおじさんの背中に隠れた。
ゴツゴツした大きな手でヨシヨシと撫でてくれる。
父の手を知らない私は優しいおじさんが父親そのものだった。
おじさんに甘えていると、一也がふてくされている。
「俺、いい事したのになぁ。
父さんも結局Aに甘いんだもんなぁ。」
おじさんからもお守りをもらった。
「2人とも青道に行くとなると寂しくなるな…」
ビールを飲みながら一也に聞こえないようにポツリと呟く。
「なんで?一也は寮に入っちゃうけど私は家から通うよ?」
1時間ちょっとの通学時間、通えなくはない。
お母さんも寂しがっていたから、私は通いにする事にした。
おじさんは驚いて目をぱちくりしている。
「部活入んないと思うし、運動部じゃないから、寮には入れないし。
お母さんもおじさんも一人にしたら、なんかいろいろサボりそうだし、私は監視役。」
へへへと笑うと、ポンポンと大きな暖かい手で撫でてくれた。
「A野球部入んねぇの?」
「え?なんで?野球できないの知ってるでしょ?」
「ばーーーか、やるんじゃねぇよ。
マネージャー、やんねぇの?」
マネージャー?!
私が?青道野球部の?
「私になんかできないよ」
「てっきり、なるもんだと思ってたけどな。」
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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時