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現実は厳しい。
どんなに努力しても報われることの方がここでは少ない。
「別に俺だけが辛いわけじゃない。
純だってホントはエース目指したかったはずだし、クリスも怪我してから顔つき変わっちまったし…ベンチにすら入れないやつもいる。
そいつらの分まで、コーチャーボックスで声を出し続けるよ。」

先輩は強い。
本当は悔しいはずなのに、前を向いてる。自分に与えられた役割をしっかり理解してる。

すごい人だ。
尊敬しかない。

「でも、まだレギュラー狙うから。コーチャーで終わるつもりない。」

力強い言葉だった。


「楠木先輩はよく通る明るい声だし、その声に励まされてます。後輩にもマネージャーにも優しくて、6-4-3のダブルプレーとかホントかっこいいし、それから……。」

「励ましてくれてるの?
もういいよ。ありがとう。」

「それから友達多いって小湊先輩が言ってたし、どっかの誰かは友達いないから、ホントすごいと思います。だから…」
そこまで言いかけて、言葉が出てこなくなった。

楠木先輩の整ったお顔が目の前いっぱいにあったから。

え?なに?
唇に柔らかい感触…。

えぇ?私、今楠木先輩とキスしてるの?

状況が飲み込めなくて、ポカンとしてしまう。
なんで?急に?

「Aちゃんがいっぱい褒めてくれるから我慢できなくなっちゃった。」

もう一回近づいてきた楠木先輩の胸板を力いっぱい押し返す。

「ごめんなさい…」

楠木先輩を押しのけて、階段を駆け上がった。
登りきった所で誰かとぶつかる。

「あぶねっ!A、前見ろよな。」

「……ごめん。」

「は?ちょっ…なんで泣いて…え?」

「離して…」

振りほどこうとしたけど、振りほどけない。

「Aちゃん、いきなりごめん。」
ほら、一也が離してくれないから…
楠木先輩が階段下から声をかけてる。


「なんかあったのか?」
優しい声色で聞いてくれる。なんでもないって首を振った。

「先輩、違ってたらすみません。
こいつになにかしました?」

「うん。」

「なんで泣いてるか心当たりあります?」

「いきなりキスしちゃったから、びっくりさせちゃったかも。」

グッと一也の手の力が強くなった。
自分の方に抱き寄せてきた。

「先輩でも関係ないです。順番すっ飛ばしてAを泣かせないでください。」

行くぞと低い声が響いた。

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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時

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