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10月に入って高島先生が中学生を連れてグラウンドに現れた。
「こんにちは。」
「ちっす。」
高島先生は中学生を紹介してくれた。
彼の名前は沢村栄純というらしい。
長野から見学に来たみたい。
青道の設備を見て、見たことないって感動してる?
この子、野球が大好きなんだなぁ。
第一印象はこんな感じだった。
まさかあの東先輩に噛み付くなんて思っても見なかった。
その様子を見てた一也がおもしろそうっすねって笑った。
「そいつの球俺が受けていい?」
「一也!」
ただでさえ生意気だーって東先輩に睨まれてるのに、わざわざ喧嘩売らなくても…天狗気味だって、本人に言っちゃダメだってば。
先輩相手にもそんなこと言えちゃうから、1年で正捕手が務まってるんだろうけど。
準備をしてる一也に話しかける。
「ねぇ、ほんと大丈夫?」
「ポテンシャル引き出せって礼ちゃんに言われちゃったし。燃えるだろ。中学生がドラフト候補を打ち取ったらおもしれぇじゃん。」
ホントに大丈夫かなぁ。
見たところ硬球に触れたのも初めてっぽいし。
仕事しなきゃいけないのに、気になって仕方なかった。
沢村くんが東先輩を三振に仕留めた。
帰ったあと一也を捕まえて、詳しく話を聞く。
「ねぇねぇ、あの子のボール動いてなかった?」
「さすがだな。何年も野球見てただけある。
あいつはおもしろい投手になるぞ。」
一也がワクワクしてる。
「あの子になんて声かけたの?」
「知りたい?」
もったいぶってニヤリと笑った一也はホントに小憎たらしい。
「教えてくれないならいい。」
「待て待て。ちゃんというから。最高のピッチングってのは、投手と捕手が一体となって作り出す作品だろ?って言った」
一也らしいな。
ピッチングが作品か。
「春になるのが楽しみだな。」
なんとなく一也とあの子がバッテリー組んでる姿が目に浮かぶ。
あの子が入ってきたらおもしろくなりそう。
その頃から楠木先輩が遅くまで守備練習してるのをよく見かけた。
焦ってるって言ってた。
倉持にレギュラーポジション取られそうだ。今が踏ん張り時だって。
そうやって頑張ってたのに…
「監督から次から三塁コーチャーやってくれって頼まれちゃったよ。」
ベンチの掃除をしてると力なく笑ってそういった楠木先輩がゆっくりとベンチに腰をおろした。
ポンと隣を叩いて、ちょっと聞いててと。
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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時