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吐き出した息が白くなる冬。
単語帳を片手に冬期講習から自宅に向かって歩いていると、ランニング中の一也と遭遇した。


「よっ!」

「わっ!びっくりした。後ろから急に話しかけて来ないでよー」

「見ながら歩いてると危ねえぞ。」


一分一秒だって無駄にしたくない思いだった。

「そんなに焦んなくてもA判定出てんだろ?」

「でも…不安なんだもん…。」

カバンに単語帳をしまって、ランニングからウォーキングになってしまった一也の隣を歩く。

「気持ちはわからねぇでもないな。」

「でしょ?やってもやっても不安で、悪夢をよく見るの。
試験の日、テスト用紙を前にしてもなーんにもわかんない。なんにも解けないってやな夢。」

「コン詰めすぎってことなんじゃねぇの?
今日俺んち来いよ。」

「ん?なんで?」

「うまいもん食わしてやるから。
俺が腕によりをかけた晩飯。ありがたく思えよ。」

今日はお母さんが仕事で遅くてコンビニ弁当確定だった。

ちなみに父親はいない。
離婚てやつ。

料理は一也ほどできないけど、やれないことはない。今はどうもキッチンに立つ気さえ起きない。

一也のごはん美味しいもんなぁ…。

ぐぅーーーとタイミングよく鳴る自分のお腹が憎い。
一也に笑われて、恥ずかしくなった。


「そうと決まれば、早く帰ろうぜ。
腹ぺこだろ?」

手を繋がれて、一也のジャージのポッケに突っ込まれた。


「え、な、なに?」

「手袋してると単語帳捲れねぇからって、こんな寒い時期に素手なんてバカなのか?」

「だって…」

「風邪引いて、受験できなくなったらどうすんの?」

ぐうの音も出ない…。
右手は一也のポッケの中で、左手は一也が外した手袋をはめられた。

一也のお家に行くと、3人分の夕食が用意されてて、あーなるほどと合点が言った。


最初から一也には全部お見通しだったんだ。
母が今日いない事も、私がコンビニ弁当ですまそうとしてる事も。

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

デザートまで手作りで、このスキルの高さは何なんだろうか。
自分は甘いのなんて食べないのに…。

いちごムースなんて作ってくれちゃって…。
一也の優しさに余計に甘く感じた。

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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時

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