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扉を開けると、情けない声で俺の名前を呼ぶAが、今にも泣き出しそうにそこにいた。

布団を頭から被ってブルブル震えてる。


この光景を何度も見てきた。

「一也…雷…光った…」
そばに行くと俺にしがみついて、Tシャツをギュッと握りしめてる。

「ごめん、忘れてたわ」
震えるAの背中をさすったり、トントンと子供をあやすようにする。

ガキの頃から、何度もそうしてきた。
仕事で遅いおばさんがいない時に雷雨なんかあった日には、傘をさして何度もAの家に走ったことか。
グスグス泣くAを今みたいに抱きしめて、大丈夫だと、声をかけ続けた。
そのまま朝まで眠ってしまうこともあったなぁ。

Aが泣いているとどうしてもほっとけない。
手を差し伸べてしまう。


それはたぶん、母を亡くした俺のそばにずっとついててくれたから。
状況をうまく整理できてない幼い頃の俺は、大人達が慌ただしく動き待っている時も写真の中に収まってしまった優しく微笑む母を見つめているしかできなくて。
俺以上に泣いてるAの小さな手をずっと握っていた。

泣けなかった俺の代わりに、Aが泣いてくれてると思った。

辛かった時期を共有した唯一の存在だったから、守らなきゃ、大事にしなきゃって思っていた。

お互い高校生になって新たな出会いもある。
Aの事可愛いって言ってる奴も少なからずいる。
紹介しろってクラスのやつからも何度か言われた。

男と女ってめんどくさい。
関係に名前をつけなきゃ周りはとやかく言ってくる。

俺に取ってはAは大事な幼なじみだということだけは確かだ。
泣かせるやつは許さない。

楠木先輩は、優しい人だ。
きっとあの人なら、Aも泣かされる事はないと思うけど。

なんでだろう。
Aの隣に自分以外の男がいると想像しただけで心がざわつく。


さっきまで怖い怖いとグズっていたのに、今ではウトウトし始めている脳天気な幼なじみの頬をムニッと摘んだ。

一瞬眉間に皺を寄せてまた眠る。

「ったく、人の気も知らねぇで…」

Aを抱き起こしてベットに寝かせる。
布団をかけて、立ち上がろうとしたら、クイッと服を引っ張られた。

「いかないで」

雨の音にかき消されそうな程小さな弱々しい声でそうつぶやく。

「お前、わかってんのか…
Aは女の子で俺は男なんだぞ。
朝起きて悲鳴あげるなよ」

離してくれそうもなかったから、Aの横に寝転がった。

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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時

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