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入学式まであっという間だった。
春休み中に寮に入っちゃって、御幸家はすごく静かになった。
「おじさん、おはよう。
一也の部屋入っていい?持ってきてって言われたものあるの。」
「おはよう。いいぞ。あいつの事よろしく頼むな。」
「うん。あー、おじさんまた惣菜パンが朝ごはんなの?手抜きはダメだよ。」
食卓に並んでたのはコーヒーとパンだけ。
一也がいた頃は、和食派の御幸家だったのにな。
一人だとどうしても手抜きになってしまうというおじさんの背中は寂しそうだった。
「お味噌汁はね、私の担当なんだ。
明日から持ってくるから。ちゃんとご飯炊いてね。」
2人分も3人分も変わらない。
少し多めに作ればいい。
悪いと断られたけど、いいからって押し通した。
一也に教えてもらったから、味の保障はできる。
それ故にお味噌汁担当を言い渡された。
食事には人一倍気を使っていて、揚げ物は衣剥して食べてるし、野菜多め。すごくバランスのいい食事だって私にもわかる。
「いってきます。」
「気をつけてな。」
真新しい制服に身を包んで、桜が舞散る青道の正門をくぐる。
すぐに一也を見つけて駆け寄った。
「はい、頼まれてたもの。」
「助かった。サンキュ。
制服似合ってんじゃん。」
そういう一也だって、ブレザーの制服がよく似合ってる。
学ランからブレザーになると急に大人びて見えるから不思議。
「ネクタイ自分でしたの?」
「ちょっと苦労したけどな。」
「やっぱり、ちょっと曲がってる。」
背伸びをしなきゃ届かないとか…また身長伸びたな。
「はい、できた!」
ポンと、ネクタイの辺りを叩く。
クラスを見に行くと一也とは別々だった。
でもお隣さん。
背後から「おい」と声をかけられた。
低い声でびっくり!
「見ねぇから…」
「ご、ごめんなさい。」
「お前確か倉持っていったっけ?」
「あん?」
野球部の人かな?ちょっと怖いからもう自分のクラス行っちゃおう。
出席番号順が割り振られた座るように黒板に書いてある。
えーと、どこだ?
見つかった席に腰を下ろすとさっきの倉持くんていったっけ、怖い人がドカッと座った。
ヒィィィ…ずっとこっち見てるんだけど…なにか不手際でもあったかな…。
「お前か?御幸の幼なじみって。」
「そうでございます。」
「ビビんなよ。俺も野球部だ。よろしくな。」
「こちらこそ。」
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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時