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彼より私の方が3ヶ月早く産まれて、子供の頃はかけっこは私の方が速かったのに、いつの間にか敵わなくなって身長だって、追い抜かれた。
見上げないと話せなくなったのはいつ頃かなぁ。
その頃から幼なじみの彼は男なのだと改めて思い知らされた。
彼の呼び方は最初はかぁくん
次にカズくん、今では一也って呼び捨てで。
それは彼も一緒で私の事を呼び捨てにしてくる。
お母さんを亡くした時の一也は、このまま消えてしまうんじゃないかってほど、しょんぼりしてて、お父さんを支えようと必死に笑顔を作ってた。
口癖は「俺が頑張らなきゃ」だった。
涙を見たのはお母さんのお葬式の時だけ。
最愛の母を亡くしたんだからもっと泣いてもいいと子供心に思ってた。
夏休みとか長期の休みの時はうちに預けられていて、宿題を一緒にしたり庭のビニールプールで遊んだりとか、幼い頃の想い出にはいつも一也がいた。
夏休み、テレビから聞こえてくる歓声に耳を傾けると、青道高校が試合をしていた。
子供ながらに、高校生のお兄さん達がすごくかっこよく見えて、テレビに齧りついて試合を見ていた。
「A、野球わかんのか?」
「わかんないよ。でもこの人たち…すっごくかっこいい!
一也は野球わかる?」
「ちょっとだけなら…」
教えて教えてと一也のTシャツを引っ張りながら強請って、ルールを教えてもらった。
「リトルリーグに入れる年になったら俺も野球するんだ。
休みの日、父さんがキャッチボール付き合ってくれるって。今から楽しみだなぁ。」
「一也、野球するの?甲子園行く?」
「高校生になったら必ず行ってやる。」
「いいなー。私も野球やりたい!」
「キャッチボールするか?」
一也に誘われるままに庭に出て、ボールを投げてみたけど、全く届かないし、取れないし
私に野球の才能はこれっぽっちもなかった。
最終的には、窓ガラスを割って親にしこたま怒られるというオチ付きで…
一也の応援に徹する事に決めた。
いつも一緒に遊んでいたのに、野球だ家事だって忙しくしてて前みたいに遊べなくなったのが寂しくて、少年野球のグラウンドにくっついていくようになった。
一也はキャッチャーになった。
志願して。
なんで?って聞いたらあんな面白いポジション他にねぇよって、本当に嬉しそうに笑ってて、私まで嬉しくなる。
それに…と続けた一也は、言いかけた言葉を飲み込んだ。
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ow17fc14(プロフ) - マリイさん» コメントありがとうございます。自信はないですが、御幸の話が終わったらチャレンジはしてみようと思います。気長にお待ちください。 (2020年12月10日 9時) (レス) id: aa2425e726 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年12月8日 19時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩葉 | 作成日時:2020年12月5日 12時