第41話:奪還 ページ42
「A!!……大丈夫か!?」
「あ、……あ、かし、さん?」
眼鏡を掛けていないAにはまだ今何が起こったのかを把握出来ていない。
赤司の声が聞こえてから男の手が首から離れ、なにか重いものが地面に落下する音と鈍い悲鳴と共に、赤司の顔が視界に入った。
「赤司さん……きて、くれた、?」
「ああ。」
昨日何度か抱きしめられたその腕にかかえられて、混乱する頭でもそれだけはわかる。
ありがとうや、心配かけてごめんなさい、言うべき言葉はたくさんあるのに喉から何も出てこない。
その代わり、膜のように溜まっていた涙が、彼の微笑みを見た途端にぼろりと溢れて零れた。
なにがなんだかわからない、しかし赤司の「もう大丈夫だ、」という言葉の意味だけはわかって、Aは赤司の胸元にぎゅっとしがみいた。
その背後。
背中から落ちた衝撃に噎せながら立ち上がった男が、再び赤司に向かって拳を振り下ろそうとしていた。
しかし、
「後ろからはひきょーでしょ。」
「ぐ!?」
追い付いた紫原の手によって阻まれる。赤司の蹴りにより痛めた腕を掴まれ、顔を顰める。
「あんま調子乗ってっとさぁ。
ヒネりつぶすよ?」
そのままミシリと骨が軋むほど握りしめる。
「が!!……くそッ……離せ!」
先程赤司に投げられた際に頭を打ち、脳震盪を起こしていたことも加わり、紫原の手を振りほどいた衝撃で地面に倒れ込む。
その隙に、桃井を捕まえる男の背後に影が回りこんでいた。
「桃井さんを離してください」
「どわ!?」
誰もいなかったはずの背後から声が聞こえ、肩を掴まれた驚きで桃井に回していた腕が緩む。
「な、なんだ?どこから……」
「他所様の女に手ェ出すんじゃねぇよ」
「ぎゃ!?」
その瞬間を狙って胸に蹴りが飛び、男は吹っ飛ばされる。
「テツ君……!大ちゃん!!」
桃井が2人の名前を呼び、感激のあまり2人にまとめて飛びついた。
よろけたものの、黒子は安心させるように背中に優しく手を置き、青峰も面倒そうにしつつどこかほっとした顔をしている。
蹲る大男、蹴り飛ばされて転がる男、そしてあと一人。
残った男は、この場に立っているのが自分だけだとわかると、慌てて真綾を離して突き飛ばした。
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作者名:Mae | 作成日時:2020年10月22日 16時