第24話:返却 ページ25
「返し……ヴッ」
「A……、ボクですよ、」
手を伸ばすが全く検討ハズレな方向だったようで、テツくん(本当に見えない)にぶつかってしまった。恥ずかしい。
紫原さんにリレーされてしまった眼鏡は「うわコレ目ちっちゃく見えるやつじゃん目ぇ悪〜い」とまた弄ばれているようで。
テツ君と反対側に居るはずだ、一番大きい塊に手を出して確かめると、案外さらっと返してくれた。
もう、やめてくださいよ、と眼鏡をかけ直すと、またさつきちゃんが目をぱちくりさせていて。
「えぇ……、Aちゃんなんで眼鏡掛けてるの?絶対コンタクトの方がいいよ?」
と真剣な顔で言ってくる。
うーん、でも私は激しい運動しないし、コンタクトの必要性はあんまり感じてないというか。
「掛けてない方が可愛いのに…、勿体無いよ!」
「そ、そうですか?ありがとうございます……?」
褒められてるんだかなんだか分からないけど一応お礼を言っておく。
「てかなんなのその眼鏡、ださくねー?」
「え"っ」
最後のは紫原さんだ。はっきり言ってくれる……。早く買い換えるべきかなぁ。
悩んだ顔をしていると、緑間さんだけは
「俺はわかるのだよ。」
と自分の眼鏡を押し上げて頷いてくれた。
この人もだいぶ目は悪いらしい。仲間だ。
と、そうこうしている間にだいぶ時間が経ってしまっていたようだ。自主練をしていた部員は一人二人と減り、体育館には私達だけになっていた。
「僕達もそろそろ出よう。もういい時間だ」
赤司さんの言葉に全員が頷いて、体育館を出ようとする。
「あ、さっきも言ったけど、明日からは中間考査期間だから活動はなしだからね。わかってるな、涼太、大輝?」
名指しされた2人がビクリと震えた。
明日は土曜日で……そうか、だから赤司さんは無理やりにでも私を今日ここに連れてきたかったんだ。
テスト期間中じゃ部活は休みだし、その間に逃がさないようにと。
帰宅部だったからテスト期間中の部活というものを意識していなかった。
さすがの策士である。
「A、明日市立図書館でいいですか?」
「あ、うん、勿論。」
テツくんが耳打ちしてくる。
テツくんと私は考査前になると二人で毎回勉強会をしている。僭越ながら私が教える側になって、どっちかの家か図書館でやることが多い。
ただ、赤司さんがそれを聞き逃しているはずがなく。
ふーん。図書館ね、と呟いていたことに私は気付けなかった。
141人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Mae | 作成日時:2020年10月22日 16時