第23話:視野 ページ24
「俯瞰で……?」
「視覚外の立体が見えているかのような動きだっただろう。
いわゆるイーグルアイ、とか呼ばれる類の能力だね」
鷲の目、と呼ばれるその感覚は、特別な視野の広さを持ち、その視野でもって得た二次元の視覚的情報を頭の中で立体的に組み立てられる、というものだ。
要するに、自分が見えている景色をもとに、異なる角度の俯瞰図を精密に頭の中に創造できるのだ。
更に広い視野を持つ人の能力をホークアイとも言うそうだけど、私は眼鏡を掛けていることもあって多分、そこまでは広くない。
「そっか、だから視覚の外から飛んできたボールにも反応できて、背中側から来たきーちゃんにも気付けたんだ。」
「あーテツのことも最初から見えてたもんな。」
テツくんに関しては昔から影の薄い彼を探す癖がついていたというか。
いやむしろその癖のせいで視野が広がった……?
「オマエはバスケはしねーの?」
「体を動かすのは好きですけど、バスケは見てる方が楽しいので……、」
ふーんそーかよ、と不思議そうに私を見る青峰さん。
黄瀬さんは1回意地を張ってしまった以上引き下がれないようで、「オレはまだ認めてないっスからね、地味だし!」と騒いで緑間さんに失礼なのだよと殴られている。
「痛い!でも「っち」はまだ付けないっスから!」
っち??
「おれはAちんって呼〜ぼぉっと〜」
と紫原さん。自由な人だ……今日初対面でAちんって。
……ん?ああ、「っち」っていうのも渾名に付けるあれか。
この集団は独特な渾名で呼び合うらしい。
「涼太はそう地味だなんだというけどね。
Aは崩した着方や派手な見た目じゃないだけで、別に僕は地味だとは思わないよ」
ええ、なにそれ。
確かに着崩したりはしてないし、髪も真っ黒で長いし、目立つタイプでは全く無いけど。
というか、このメンバーと比べたら誰でもそうなんじゃ。
「それにそう見えるのは大体これのせいだろう」
「あっ!?」
ひょい、と事も無げに赤司さんにまた眼鏡を奪われた。伴い視界が悪くなる。
「ちょっ、と、赤司さん!やだ、返して……、」
素顔見られるのあんまり好きじゃないのに。
悪すぎる視力を矯正するための眼鏡なのでかなり分厚いし、同じものをずっと使っているのもあって「眼鏡外すと別人」とよく言われるのだ。
拗ねるわけじゃないけど、言われすぎて少しうんざりしている所もある。
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作者名:Mae | 作成日時:2020年10月22日 16時