第21話：不満 ページ22
「でも……、それじゃやっぱ頭いーだけでしょ！？」
「Aは運動神経もいいですよ。」
「わっ！？黒子っち！？いたんスか！」
「ボクのバスケの練習にもたまに付き合ってもらってますし、結構バスケにも詳しいですよ。飲み込みが早くて、羨ましいくらいです。」
今度はテツくんがどこからともなく。自主練中だったのか、ボールを持って現れた。
フォローしてくれるのは嬉しいけど、ハードル上げられても困る……！
黄瀬さんはそれがまた気に食わなかったのか、さらに不機嫌な顔になる。
「じゃあ！俺と1本勝負して見せて欲しいっス」
「はぁ？何を言っているのだよ。水織がどれだけ上手くとも、帝光のレギュラーのお前に女子がかなうはずがないだろう。馬鹿も休み休み言え。」
「緑間っち辛辣！？」
「きーちゃん、ちょっと言いすぎだよ！」
「え、オレっスか！？」
なんだか騒ぎになってきた。
どうしよう、困ったな……。
「じゃあ、じゃあ！
俺はこっから動かないから、1本だけシュートまでやってみせるのはどうスか？俺を障害物だと思って！」
「アホらしい、なんの意味があるのだよ…」
モップを持ったままゴールの間に仁王立ちする黄瀬さんに対して、はぁ、とわざとらしく溜息をつく緑間さん。
揉め始めた2人を前にどうしたらいいかわからなくてテツくんの方を見ると。
「A。
ーーはいっ」
「え」
ぽんっ、と。
テツくんから持っていたボールが投げられた。
「あのゴールです。ゴー！」
黄瀬さんの奥に浮かぶゴールを指さし、テツくんがふらっと走り出す。
これまで何度もテツくんの練習に付き合っていた私は、反射的に。
指さされたゴールの方に向かって、ドリブルしていた。
「えっ！？」
黄瀬さんを背に、体を回転させて一歩、二歩……足を止める。
少し遠いけど、ここからなら届くだろうかーーー？
シュートのモーションに入ろうと構えたその瞬間、後ろに居た黄瀬さんがブロックしようと手を伸ばしてきているのがわかって。
動かないって言ってたのにとか、モップが倒れるとか余計な思考は既に頭になくて。
あ、捕まる。
そう思った時には、また反射的に、
「ナイスパスです。
ラスト、シュート！」
黄瀬さんがブロックのジャンプを着地して振り返る頃には、手慣れたテツくんのパスを受け取ったレイアップシュートが、ゴールに向かって放物線を描いていた。
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作者名：Mae | 作成日時：2020年10月22日 16時
