第15話:質問 ページ16
「ね、Aちゃんって生徒会の事務員やってるよね」
ジャージに着替えて部室棟の隅、ビブスやシャツを洗濯機に放り込みながらさつきちゃんが言う。
「あ、はい、そうですね」
「だよね!赤司君とはそこで関わったのかな?」
関わったというか目をつけられてしまったというか。
「頭もいいもんねぇ。ずっと定期テストも上の方だよね?それで帰宅部なら、赤司君もほっとかないよねぇ、」
「う、うーん……そうなんでしょうか…」
うんうん、と上手いこと解釈してくれているようである。
言われてみて気付いたけどそっか、別に怪我を盾に脅迫されたことは言わなくても納得はしてもらえるのか。
ちなみにこの学校では定期テストの結果は総合上位のみ張り出されることになっているので、わかる人には分かってしまう。さつきちゃんは色々、知ってるタイプの人のようだ。
「でも、なんで急にバスケ部入ってくれることになったの?バスケはやってたわけではないんだよね??
赤司君もテツ君やミドリンと知り合いなことは知らなかったみたいだし、何かきっかけでも無いと副部長のミドリンにも言わずに突然連れてくるとは思えないけど……、赤司君とは元々仲良かったの?」
き、急にぐいぐい来た……!
全然納得してなかったみたいだ、疑問符だらけでどれから答えたらいいんだろう。
「えっとえっと、私はもちろんですが赤司さんは私のことは名前程度には知っていたみたいで、でも喋ったのは今日が初めてです。だから仲良いとは言えるかどうか……、」
「今日?初めて?」
「はい。たまたまふたりになった時に、私の不注意で手に怪我をさせてしまって。
その、お詫びと言ってはなんですが、あれよあれよという間にマネージャーになることになってしまってて……」
多少端折ったが嘘は言ってない。
「えぇっ!てことは、赤司君てば、無理やり?
結構強引なとこあるよねぇ、赤司君」
驚きと少しの呆れを含めた表情。
きっと多少は振り回されてきたんだろう。
「え、じゃあ、ほんとはやりたくないけど連れてこられちゃったの?それって、大丈夫?」
一転して不安そうな顔になる。
それはそうだ、これだけ本気で活動している強豪部で、やる気のないマネージャーはむしろ邪魔になるだろう。
経緯は言わない方が良かっただろうか。
けれど変に嘘をついて彼女を騙すようなのも気が引ける。
何よりこれから信頼関係を築かなければならない相手だ。
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作者名:Mae | 作成日時:2020年10月22日 16時